
30年前の卒業証書と、昨日の学び。あなたはどちらで勝負しますか?
※これは仮定の話です。でも、読み終わったとき、きっと「仮定」とは思えなくなるはずです。
Contents
異端の総理、誕生
2026年、日本に異例の総理大臣が誕生した。
学歴は中学卒業のみ。
建設現場の作業員から始まり、独学で事業を興し、叩き上げで政界入りした男だった。
就任会見で、彼はこう言った。
「この国は、失敗を恐れすぎている。挑戦しない。変わろうとしない。その元凶は何か。私は『過去の肩書きにしがみつく文化』だと考えている」
記者団がざわついた。
「よって、私は一つの法案を提出する。『履歴書改革法案』だ」
履歴書から「学歴欄」が消えた日
法案の内容は、こうだった。
- 履歴書から従来の「学歴欄」を廃止
- 代わりに「直近1年間の学習・実践履歴」を記載する欄を新設
- 資格欄も、取得から1年以内のもののみ記載可
つまり、30年前に取った資格も、20年前に卒業した大学名も、もう書けない。
「あなたが何者だったか」ではなく、「あなたは今、何を学んでいるか」だけが問われる世界。
SNSは炎上した。 「学歴差別だ」「努力の否定だ」という声が溢れた。
しかし法案は、賛成多数で可決された。
二人の50代、運命の分岐点
この話の主人公は、二人の50代男性だ。
佐藤さん(55歳)——職を転々とした男
佐藤さんは、高校を中退している。
工場、配送、介護、建設現場。 履歴書の職歴欄は、いつも埋まりきらないほどだった。
「俺みたいなやつは、どこに行っても『経歴が浅い』って言われるんだよな」
そんな彼が変わったのは、去年のことだった。
地元の商工会で開催された「生成AI入門セミナー」に、たまたま参加したのだ。
「……これ、俺でも使えるのか?」
その日から佐藤さんは、毎晩パソコンに向かうようになった。
建設現場で使える安全マニュアルの自動作成。
介護記録の効率化。 配送ルートの最適化。
どれも「自分がやってきた仕事」に関わることだった。
そして気づけば、毎日ブログを更新するようになっていた。
「今日試したこと」
「うまくいかなかったこと」
「明日やること」
誰に頼まれたわけでもない。ただ、楽しかったのだ。
田中さん(54歳)——大手管理職エリート
田中さんは、有名私立大学を卒業している。
新卒で大手メーカーに入社し、30年間、同じ会社で働いてきた。
部長にまで昇進し、部下は15人いた。
「学歴と社歴がものを言う時代を、俺は生き抜いてきた」
それが田中さんの誇りだった。
しかし、2026年春。 会社が突然、事業撤退を発表した。
「……え?」
リストラ対象者リストに、田中さんの名前があった。
運命の面接会場
二人は、同じ会社の中途採用面接を受けることになった。
田中さんの面接
「田中さん、素晴らしい大学をご卒業されていますね」
「ありがとうございます。まあ、当時はそれなりに苦労しまして……」
「で、この1年間は何を学ばれましたか?」
田中さんは、言葉に詰まった。
「……いえ、部長として部下のマネジメントを……」
「学習履歴が空欄ですね。何か自己研鑽はされましたか?」
「……特には……」
面接官は静かに履歴書を閉じた。
「残念ですが、今回はご縁がなかったということで」
佐藤さんの面接
「佐藤さん、職歴が多いですね」
「はい……お恥ずかしいんですが、色々ありまして」
「いえ、そこは気にしていません。で、この1年は何を?」
佐藤さんは、スマホを取り出した。
「これ、見てもらえますか。毎日更新してるブログなんですけど」
画面には、365日分の記事が並んでいた。
「建設現場×生成AI」
「介護記録の効率化」
「配送業務のAI活用」——。
「あと、これが自分で作った業務改善ツールです。現場で実際に使って検証してます」
面接官の目の色が変わった。
「これが……あなたの『最新学歴』ですね」
「……はい。俺の学歴は、たぶんこれしかないんで」
「採用です」
これは仮定の話。でも——
この物語はフィクションだ。
でも、考えてみてほしい。
もし明日、あなたの履歴書から「学歴欄」が消えたら。
「直近1年の学習履歴」だけで勝負しなければならなくなったら。
あなたは、何を書けるだろうか。
30年前の卒業証書は、もう使えない。 10年前に取った資格も、書けない。
あるのは、「昨日の自分」だけだ。
私は「生成AIは九九」という言葉を広めたいと思っている。
九九ができない大人はいない。でも最初からできたわけじゃない。
生成AIも同じだ。今は「できる人」と「できない人」がいる。
でも数年後、それは「できて当たり前」になる。
そのとき問われるのは、「最終学歴」ではなく「最新学歴」だ。
さあ、あなたの「直近1年の欄」には、何が書けますか?

