
「うちの若手は、言われたことしかやらないんです」
研修や打合せで、経営者や管理職の方から、よく聞く言葉です。
困っているのは本当ですし、そこに目を向けているのは正しいと思います。
ただ、原因の置き場所が少し違うのかもしれません。
指示待ちの人が多い職場は、部下の意欲が低いのではなく、すべてを自分の管理下に置こうとする設計が、時間をかけてそういう人を残してきた。私はそう見ています。
なぜ指示待ちの部下が増えるのか
細かく指示され、出したものを毎回直される。
それが続くと、人は「考えても、どうせ直される」と学びます。
考えるのをやめるのは、怠けではありません。その職場で傷つかずにいるための、合理的な判断です。
そして、上の人が思い描いた手順どおりに進むことが最優先になると、部下の思いがけない提案は「計画にない」として入口で止まります。
想定を超える結果につながる道は、こうして毎日、静かに閉じていきます。
職業訓練で、私も握ろうとしていた
偉そうに書いていますが、これは私自身の話でもあります。
職業訓練のDX講座を任された最初の頃、受講生の方から鋭い質問が飛んでくると、「この人は、私のスキルを試しに来ているのでは」と感じることがありました。
実際はそうではなかったと思います。
それでも、そう感じてしまった日は、正直に言って気分がよくありませんでした。
いまは逆です。
私より詳しい人、その業界の事情をよく知っている人がいたら、どんどん発言してもらっています。
講座は7期目、累計600時間を超えました。続けて分かったのは、そのほうが楽だということです。
全部を自分で答えなくていい。教室の誰かが私の知らない現場の話をしてくれると、ほかの受講生の顔つきが変わります。私も毎期、受講生から学んでいます。
最終学歴より、最新学歴。
教える側も例外ではありません。
握りすぎた職場から、最初に辞めるのは誰か
自分で考えて動ける人ほど、裁量を取り上げられる場所を先に離れます。
残るのは、指示どおりに動く人です。
つまり「指示待ちが多い」は、結果として選別が終わったあとの姿かもしれません。
一人の人間が見きれる範囲には限りがあります。
全部を握っている組織は、握っている人の手の大きさで成長が止まります。
石川や富山の中小企業や介護事業所のように、もともと人が少ない職場では、エース一人の離職がそのまま現場を止めます。
辞めても困らない時代に、辞めない理由はあるか
以前なら、組織を離れて一人で動くのは大きな賭けでした。
いまは違います。
私自身、個人事業主として、事務も資料づくりも発信も、生成AIを右腕にして回しています。
窮屈だと感じた人が、自分の足で動き出すハードルは確実に下がりました。
だからこそ、経営者や管理職の側に問われます。
辞めても困らない時代に、ここで働き続ける理由をつくれているかどうかです。
手放す一歩目は、小さくていい
いきなり全部を任せる必要はありません。
まずは、一つの業務の「途中」を任せてみてください。
議事録の下書き、記録の言い回し、お客様へのおたよりの初稿。仕上げは自分が見てかまいません。
そして、自分より詳しい部下がいる分野では、会議で先に話してもらう。
それだけで、職場の空気は変わり始めます。
最近、部下の提案で、ご自身の想定を超えたことはありましたか。
もし思い当たらないなら、それは部下の問題ではなく、こちらの手の握り方を見直すときなのかもしれません。
生成AIの研修も、任せる練習の場として一緒に組み立てられます。

