
「AIのセミナーは、もう集まりにくいんです」と言われました
先日、とある方からセミナーのご依頼をいただきました。
その打合せの中で、最近の開催事情を率直に教えていただきました。
AIに関するセミナーは、もうどこでも開かれている。だから、集客がしづらい。
正直に書くと、私自身にはその感覚があまりありませんでした。
隠さずに話していただけたことがありがたく、同時に「実際はどうなのだろう」と気になりました。
「飽きられたんでしょう」「無料の会が増えたからでしょう」。
こういう答えは、すぐに思いつきます。ただ、それは1段目の答えです。
この2年間で80回以上登壇してきましたが、自分の感覚だけでは、その奥が分かりませんでした。
そこで、感覚で答えを出すのをやめて、なぜなぜ分析にかけてみることにしました。
なぜなぜ分析とは何か
なぜなぜ分析とは、起きたことに「なぜ」を繰り返して、表に見えている理由の奥にある原因まで掘っていく考え方です。
ものづくりの現場で長く使われてきたビジネスフレームワークの一つで、回数の目安は5回と言われます。
私は、このやり方は生成AIにとても向いていると思っています。
理由を細かく分けて、一段ずつ出してくれるからです。
一人でやると2段目あたりで手が止まりますが、AIは止まりません。
頼み方は、これだけです。
現象:2026年、生成AIのセミナーの集客が難しくなってきた。
この現象について、なぜなぜ分析をしてください。
「なぜ」を5回、1段ずつ掘ってください。
途中で理由が枝分かれするなら、その枝も出してください。
ひとつだけ、先に書いておきます。
AIが出すのは「もっともらしい理由」であって、調べた事実ではありません。
残すか、消すか、保留にするか。そこは人が決めます。
なぜ2026年、生成AIセミナーの集客は難しくなったのか
返ってきた5段は、次のとおりでした。
1. なぜ、集まりにくいのか
「生成AIセミナー」という看板だけでは、足を運ぶ理由にならなくなったから。
2. なぜ、看板だけでは理由にならないのか
案内文を並べると、どの会も「概要・最新の動き・活用事例」で、違いが読み取れないから。
3. なぜ、同じ内容に集まるのか
話を聞く形式は、開きやすいから。人数を多く入れられ、端末や通信の準備も要らない。
4. なぜ、聞く形式だと来なくなるのか
聞くだけなら、ネットの記事や動画、あるいは生成AIそのものに聞けば足りるから。
一度参加した人は「もう聞いた」になる。
5. なぜ、「もう聞いた」で終わるのか
聞いたあと、自分の仕事で手を動かす時間がなかったから。
「使えるようになった」という手応えが残らず、次の会に期待しなくなった。
ここからが、人の仕事です。
1段目は、私が打合せで聞いた言葉と重なります。
4段目は、私も同じ考えです。事例を発表する会は、インターネットだけでも事足りる部分がある。
これは前から感じていました。
一方で、3段目は開く側の事情の話です。私には確かめようがありません。
ここは仮説のまま、保留にしておきます。
全部をそのまま信じない、というのも、この分析の使い方のうちです。
そのうえで5段目まで掘ると、1段目とはずいぶん違う景色になります。
飽きられたのは、生成AIではない。「聞いて終わる会」のほうではないか。
セミナーが「知る場」として作られてきて、「できるようになる場」としては作られてこなかった。
私の現場と照らしても、ここはうなずけるところでした。
AIは、枝をもう一本出してきました。参加する側の理由です。
関心の高い人は、この2〜3年でひと通り参加し終えた。
残りの人は「自分の仕事には関係ない」と思っている。
なぜなら、案内に書いてあるのが「生成AI」「DX」で、記録、申し送り、日報、見積もりといった、自分の仕事の言葉が出てこないから。
こちらも、耳の痛い話です。私の案内文にも、当てはまるものがあります。
聞く会はネットで足りる。手を動かす会は足りていない
ひと口に生成AIセミナーと言っても、やり方はいろいろあります。
事例を聞く会を、否定したいわけではありません。
最初の一歩として、「こんなことができるのか」と知る場は必要でした。
入口としては、正しかったと思います。
足りなかったのは、その次です。
だから私は、参加者に手を動かしてもらうワークショップ形式に特化して、もう少し先へ進めていきたいと考えています。
私に「集まりにくい」という感覚が薄かったのは、この形式で、少ない人数で開いてきたからかもしれません。
それに、呼んでいただく会では、人を集める苦労は開く側が引き受けてくださっています。
私に見えていなかっただけ、という面もあるはずです。
セミナーや研修を企画する方に、3つだけ提案させてください。
- 案内文に、参加者が当日、自分の手で何を作るのかを1行書く
- 「生成AI」より先に、参加者の仕事の言葉を置く。介護なら記録や申し送り、建設なら日報や見積もり
- 定員を減らす。人数ではなく、全員が自分の端末で触れたかを数える
石川県でも、生成AIの会はずいぶん増えました。 数が増えた今だからこそ、テーマではなく形式で選ばれるのだと思います。(集め方そのものについては、こちらに書きました )
同じ形式をやる人は、これから増えていきます
最後に、気をつけなければいけないことを一つ。
「これは自分にしかできない」と思っていても、同じことをやる人は増えていきます。
手を動かす形式がいいと分かれば、なおさらです。
そこへの対抗策も、考えていかないといけません。
正直に書くと、まだ答えは決まっていません。
ただ、やり方は今日と同じでいいと思っています。
「同じことをやる人が増えたら、なぜ困るのか」。
この不安にも、まず「なぜ」を一回かけてみる。
感覚で答えを出さずに、一段ずつ掘ってみるつもりです。
皆さんの会は、終わったあと、参加した方の手元に何が残っていますか。


