
前回の続きです
9月21日の記事で、AIエージェントのことを「手順と、材料の置き場所と、使ってよい道具を、先に渡したもの」と書きました。
今日は、そのうちの「置き場所」の話をします。
明日のセミナーの前に、ここだけ押さえておけば迷わない、という話です。
Claude Code を使い始めた人が最初に戸惑うのは、質問の書き方ではありません。
どこで話しかければいいのか、です。
チャット欄を探しても、見つかりません。
最初にやるのは、パソコンの中のフォルダを1つ開くことです。
Claude Codeでいう「フォルダ」とは何か
Claude Code は、Claude を「パソコンの中で仕事をさせる」形で使う道具です。
ふだんのChatGPTやClaudeの画面は、会話の窓です。
材料は、こちらが毎回コピーして貼り付けて渡します。
Claude Code は、そこが違います。
最初にフォルダを1つ選び、そのフォルダの中で仕事をします。
フォルダの中にあるファイルは自分で開いて読み、書き上げたものはそのフォルダにファイルとして保存します。
そして、フォルダの外は、こちらが許可を出さないと読みません。
たとえるなら、新しく来た職員に「この机と、この棚は使っていいですよ」と渡すことです。
机が決まっていない新人は、毎回「あれはどこにありますか」と聞き返してきます。こちらは、そのたびに説明します。
生成AIを使っていて「毎回おなじ説明をしている」と感じている人の多くは、この状態にいます。
AIの頭が悪いのではありません。
机を渡していないだけです。
私は、仕事ごとにフォルダを1つずつ分けています。
記事を書くためのフォルダ、研修の教材をつくるためのフォルダ、というふうにです。
フォルダの中に、何を置くのか
置くものは、3種類だけです。
1つ目は、約束ごとのメモです。
Claude Code では、フォルダの中に CLAUDE.md という名前のファイルを置いておくと、フォルダを開くたびに、まずそれを読みます。職場でいえば申し送りノートです。出勤したら、最初に目を通すもの。
2つ目は、材料です。
過去に書いたものの一覧、ひな形、使ってはいけない言葉の表。
私の記事用フォルダには、noteだけで1,004本ある過去記事の一覧が入っています。
3つ目は、できあがったものの置き場所です。
書いたものが画面の中で終わらず、ファイルとして残ります。
私の記事用フォルダの約束ごとのメモには、たとえばこう書いてあります。
「使ってはいけない表記の一覧は、毎回この1つのファイルから読む。記憶で書かない。過去の記事から写さない」
これには理由があります。
以前、外から指摘を受けて直したはずの表記が、別のファイルの中で2か月生き残っていたことがありました。
同じ部品が2か所にあったからです。1か所を直しても、もう1か所から写されれば、元に戻ります。
AIに任せる前は、これを私の注意力で防ごうとしていました。
いまは、置き場所を1つにすることで防いでいます。
人の注意力より、置き場所のほうが確実です。
介護の現場なら、記録のひな形と申し送りのルール。
営業なら、日報の項目と先月の実績表。
どの仕事にも「毎回口で言っていること」と「毎回探している材料」があります。
それを1つのフォルダに集めておく。やることは、それだけです。
自動と手動は、何が違うのか
ここが、いちばん誤解されやすいところです。
「AIが自動で動く」と聞くと、多くの人が身構えます。勝手に何かされるのではないか、と。
ただ、Claude Code でいう「自動」には、2つの意味があります。
これを分けて考えると、怖さの正体が見えてきます。
1つ目:手順書を「呼ぶ」ときの自動と手動
前回の記事で、決まった作業手順をAIに持たせたものを「スキル」と呼ぶ、と書きました。1枚の作業手順書だと思ってください。
この手順書の呼び出し方が、2通りあります。
手動は、こちらが名前を指定して呼ぶ方法です。 Claude Code では、半角の / に続けて手順書の名前を打ちます。
自動は、話しかけた内容から、AIが「この手順書を使う場面だ」と判断して、自分で呼ぶ方法です。
私は毎日、「ブログ 指示書」と打っています。
それだけで、指示書をつくるための手順書が呼ばれ、過去の記事との重複確認から始まります。
この記事の指示書も、そうやってつくりました。
自動で呼ばれるかどうかを決めているのは、手順書の頭に書いた、短い説明文です。
「どんなときに使う手順書か」を書いた数行。
ここが曖昧だと、呼んでほしい場面で呼ばれず、呼ばなくていい場面で呼ばれます。
明日のセミナーで手順書をつくるときも、この説明文を書くところがいちばん大事になります。
2つ目:作業を「実行する」ときの自動と手動
もう1つは、ファイルを書き換える、保存する、といった作業のたびに「実行していいですか」と聞かせるか、確認なしで進めさせるか、の違いです。
最初は、毎回聞かせる設定から始めることをおすすめします。
AIが何をしようとしているのかが、1回ずつ見えるからです。
同じ確認に、何度も「はい」と答えるようになってきたら、その作業から順番に任せていけば十分です。
任せる範囲は、あとからいくらでも広げられます。
任せていいのは、やり直しがきくことまで
では、どこまで自動にしてよいのか。私の線引きは1つだけです。
やり直しがきくことは任せる。取り消せないことは、自分で押す。
メールは、下書きをつくるところまで任せています。送信はさせていません。
下書きは何度書き直させてもかまいません。でも、送ったメールは戻りません。
フォルダにも、同じ線を引いています。
外に出せない情報が入ったフォルダは、約束ごとのメモに「読むだけ。1文字も書き換えない」と書いてあります。
自動が怖いのは、AIの能力のせいではありません。
どこで止めるかを、まだ決めていないからです。
止める場所さえ決めてあれば、それ以外は安心して任せられます。
最初の設定で、決めておく3つのこと
画面の操作手順は書きません。この分野は、ボタンの名前も位置も数か月で変わります。
決めることだけを書きます。
1. フォルダを1つだけ決める。
仕事1つにつき、フォルダ1つです。デスクトップやパソコンの中身を丸ごと渡さないでください。
2. 約束ごとのメモを10行書く。
立派な文章でなくてかまいません。毎回AIに言っていることを、箇条書きで並べるだけです。
3. 止める場所を決める。
送信、削除、支払い、外への公開。取り消せない操作は、必ず自分で押す。
もう1つ、私が実際に失敗したことを書いておきます。
8月に、2つの作業を別々の画面で同時に動かしていて、両方が同じファイルを書き換えたことがありました。残ったのは後から書いたほうで、先に書いた変更は消えました。
それ以来、同じファイルを2か所から同時に書かせないことにしています。
ほかの作業が使っているファイルは「読むだけ」と決めてあります。
あわせて、変更の履歴を残しておく仕組みも先に用意しました。
消えても戻せると分かっていると、任せる範囲を広げるのが怖くなくなります。
「全部見られるのでは」「無料版しかない」「エンジニアでないと無理」
よく返ってくる声に、先に答えておきます。
「パソコンの中を全部見られるのでは」。
見るのは、開いたフォルダの中だけです。外は、こちらが許可したときだけ。
だからこそ、何でも入ったフォルダを渡さないことが大事になります。
「うちは無料版しか使っていない」。
Claude Code そのものは、2026年9月時点では有料プランの機能です。ただ、置き場所を決めるという考え方は、ChatGPTのプロジェクトやGeminiのGemにファイルを持たせるときも同じです。
道具が変わっても、「何を1か所にまとめて渡すか」を決める作業は変わりません。
「エンジニアでないと無理では」。
書くのはプログラムではありません。日本語のメモです。
申し送りノートを書いたことがある人なら、書けます。
石川の中小企業では、一人が何役も持っています。総務が採用も請求も広報も見ている。
そういう職場ほど、毎回おなじ説明をしている時間が、いちばん高くついています。
置き場所を決めるのに、専門の担当者はいりません。
明日までにやっておくと楽な3つ
- 毎回AIに言っている「約束ごと」を、5行だけメモ帳に書き出す。
明日、そのまま手順書の材料になります - その仕事の材料が、いま何か所に散らばっているかを数える。
メール、紙、共有フォルダ、頭の中 - 「これだけはAIに押させない」操作を、1つ決めておく
Claude Code で最初に開くのは、チャット欄ではなくフォルダです。
AIに渡すのは、質問ではなく「机」と、その机の鍵をどこまで預けるかです。
あなたの仕事の材料は、いま何か所に散らばっていますか。
▼ 明日開催|AIエージェントの「スキル」入門
9月26日(土)10:00〜12:00、金沢市東山の AnnChai で開催します。
ChatGPT・Claude・Geminiの3つを無料のアカウントで実際に触り、思いついたメモや音声入力を、決まった形の営業日報に変える手順書を1枚つくります。
今日の記事で書いた「置き場所」と「止める場所」は、その手順書を仕事で使い続けるための話です。
参加費2,000円。
生成AIを使ったことがない方も対象です。
ノートPC推奨(スマホでも参加できます)。
Google Chrome と、ChatGPT・Claude の無料アカウントに事前にログインしてお越しください。



