
働いている人が、仕事以外で学ぶ時間は1日に何分あるでしょうか。
総務省の調査では、2016年が6分でした。
2021年の調査では7分です。5年で1分しか増えていません。
もうひとつあります。勤務先の外で学習や自己啓発を「特に何も行っていない」人は52.6%。
18の国と地域を比べた調査で、日本がいちばん高い割合でした。
先に書いておきます。これは誰かを責めるための数字ではありません。
私は研修やセミナーで教える側にいます。この数字を見て、正直に残念だと思いました。
そのうえで、何を変えれば数字が動くのかを考えました。
行き着いたのは「何を学ぶか」ではなく、「誰から、誰と学ぶか」でした。
日本の社会人の学習時間は、1日何分なのか
もう少し数字を見ておきます。
総務省の社会生活基本調査は、5年に一度、日本に住む人の1日の時間の使い方を調べています。
その中に「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」という項目があります。
学校の授業は含みません。仕事の外で、自分で学んだ時間です。
働いている人(有業者)の平均は、2016年が6分、2021年が7分でした。
ただ、これは平均です。毎日しっかり学んでいる少数の人と、まったく学んでいない大多数の人を足して割った数字です。
実際には、「1日7分ずつ学んでいる人」がいるわけではありません。
ほとんどの人は0分で、ごく一部の人が長く学んでいる。
それが7分の中身です。
もうひとつの数字は、パーソル総合研究所の国際比較の調査です。
20〜69歳の働く人に、勤務先以外で学習や自己啓発をしているかを聞いたところ、日本は52.6%が「特に何も行っていない」と答えました。調べた18の国と地域の中で、いちばん高い割合です。
働く人の半分以上が、仕事の外では学んでいない。
そして、この5年でほとんど変わっていない。ここまでが数字の話です。
なぜ日本の社会人は、勤務外で学ばないのか
「やる気がないから」で片づけるのは簡単です。ただ、私はそうは見ていません。
よく指摘される構造は、主に2つあります。
ひとつ目。学びは会社が用意するもの、という前提が長く続いてきました。
研修は会社が企画し、会社の時間に受けるもの。自分でお金と時間を出して学ぶのは、転職を考えている人か、よほど好きな人。そういう空気が、多くの職場にまだ残っているように見えます。
ふたつ目。学んでも、評価や給料に結びつきにくいと言われます。
学んだことが仕事の成果になるまでには時間がかかります。その間、誰にも気づかれません。
気づかれないことを、一人で続けるのは難しいです。
私が加えたいのは、3つ目です。
一人で始めても、話す相手がいません。
石川の中小企業では、同じ仕事をしている人が社内に1人しかいない、ということが珍しくありません。
総務も経理も1人。生成AIを試してみたいと思っても、「これ、どう使ってる?」と聞ける相手が社内にいない。分からないところで手が止まり、止まったことを話す相手もいない。
そうして、いつの間にか0分に戻ります。
教える側だから、言いにくいことを書きます
私は、教えて、その対価として謝礼や謝金をいただく側にいます。
だから、この数字は本当に残念です。お金を使って学ぶことに、ここまで後ろ向きなのか、と思います。
ただ、講師が「お金を払って学びましょう」と書けば、宣伝に聞こえます。それは分かっています。
それに、正直に書くと、即効性のある解決策は、私もまだ見つけられていません。
「もっと学びましょう」と呼びかけても、1日7分は動かないでしょう。
教材を増やしても、たぶん同じです。教材は、もう十分にあるからです。
何を学ぶかより、誰から・誰と学ぶか
いまは、何を学ぶかで迷う時代ではありません。
生成AIに「50代の事務職が、明日から使える生成AIの学習計画を作って」と頼めば、数秒で出てきます。
無料の動画も、解説記事も、いくらでもあります。
足りないのは教材ではありません。
分からなくなったときに、続きを一緒にやる相手です。
だから私は、「何を学ぶか」より先に、2つを決めたほうがいいと考えています。
誰から学ぶか。
自分の現場で、実際に使っている人から学ぶ。資格や肩書きではなく、昨日も使っていた人からです。
そういう人の説明には、「ここで一度つまずきました」が入っています。その一言が、次の人の手を止めずにすみます。
誰と学ぶか。
同じ地域で、同じような悩みを持っている人と学ぶ。業種が違ってもかまいません。
むしろ、年代も立場もばらばらのほうが、見ているところが違って面白くなります。
私は石川で、月に一度「石川DX実践会議」という会をひらいています。
これまで21回、集計できている範囲で147名が参加しました。全部の回が有料です。
日本人はお金を使って学ばない、と言われます。それでも、有料の会に足を運んでくださる方がいます。
その理由を、私は内容よりも「そこに誰がいるか」だと考えています。
社員に「勉強して」と言う前に、経営者ができること
「社員に勉強してほしいが、言っても学ばない」。
経営者や人事の方なら、一度は感じたことがあるかもしれません。
その気持ちは分かります。ただ、「勉強して」と言っても、1日7分はたぶん動きません。
一人でやってください、と言っているのと同じだからです。
代わりに、こう考えてみてください。
社内で、2人から一緒に学ぶ場をつくる。
大げさな研修でなくてかまいません。昼休みの15分、同じ画面を2人で見る。
それだけで、「分からないところで止まる」が「分からないところを話す」に変わります。
組み合わせは、年代も部署も違う2人がおすすめです。
50代の総務と、20代の現場。聞く側と教える側は、テーマによって入れ替わります。
社内に相手がいなければ、社外に探してください。地方の中小企業ほど、社外の場が効きます。
社内では1人しかいない仕事も、地域で見れば同じ悩みの人が何人もいるからです。
教育にかけるお金は、研修の当日で終わらせないほうがいい。翌日から、誰と続けるか。
そこまで決めて、はじめて研修の費用が生きてきます。
最終学歴より、最新学歴。一人では更新しにくい
私はずっと「最終学歴より、最新学歴」と言い続けています。
何年前にどこを出たかより、今日、何を学んだか。
ただ、最新学歴は一人では更新しにくいものです。
1日7分という数字が、それを示しているように思います。
最後に、ひとつだけ問いかけさせてください。
あなたが最後に、誰かと一緒に何かを学んだのは、いつでしょうか。
思い出せなければ、次の一歩は教材選びではなく、一緒に学ぶ相手を見つけることかもしれません。
一緒に学ぶ場として、石川で月に一度、石川DX実践会議をひらいています。
会の成り立ちと、なぜ講師を私1人にしていないのかは、こちらにまとめました。
石川DX実践会議とは|地域のITリテラシーは、地域で実践している人が上げる
https://www.solobizjourney.com/2026/09/22/peer-learning-workshop/
次回の開催案内はこちらです。
https://www.solobizjourney.com/dx-kaigi/

