
言葉が増えるほど、現場は動かなくなる。
「DXもまだ終わっていないのに、今度はAXですか」
生成AIの話をすると、経営者の方からこんな声を聞くことがあります。
口には出さなくても、顔にそう書いてある方もいます。
その感覚は、正しいと思います。
今日は、AXとは何かを30秒で説明したうえで、なぜ横文字が増えるほど現場の活用が進まないのか、そして石川の中小企業は何から手をつければいいのかを書きます。
AXとは何か。DXとの違いを30秒で
AX(AIトランスフォーメーション)とは、AIが仕事の一部をこなすことを前提に、仕事の進め方を組み替えることです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)との違いは、処理や判断を誰がするかにあります。
- DX:紙の帳簿を会計ソフトに替えるなど、道具をデジタルにする。入力も判断も人がする
- AX:領収書の写真をAIが読み取り、仕訳の案まで出す。人は最後に確かめるだけ
答えとしては、これで十分です。ただ、この記事で本当に書きたいのはここからです。
石川の現場では、DXもまだ途中ではないか
この2年間で、研修やセミナーに80回以上立ってきました。お会いした方は800名を超えます。
石川・富山を中心に、介護施設、建設業、製造業、士業の事務所と、さまざまな現場に入りました。
そこで見えるのは、紙の書類をExcelに移している最中の会社が、まだ少なくないということです。
共有のフォルダを作ったものの、結局は各自のパソコンに保存している。そんな職場も珍しくありません。
そこへDX、GX(脱炭素に向けた取り組み)、そしてAXと、新しい言葉が次々にやってきます。
私はこう考えています。
横文字や略語が増えるほど、現場への浸透は遠のいていく。
言葉の数と、現場で実際に使われている度合いは、反比例しているように見えます。
なぜ、使いこなせない言葉が次々に生まれるのか
誰かが悪いわけではありません。そうなりやすい構造があります。
1つ目は、名前を変えると、進んだ気になれることです。
「うちもAXに取り組む」と会議で言った瞬間、何かが一歩進んだように感じる。
けれど、翌朝の現場は昨日と何も変わっていない。多くの会社で、こうしたことが起きているように見えます。
2つ目は、前の言葉が成果を出す前に、次の言葉が来ることです。
売る側や発信する側にとって、同じ言葉を使い続けると違いを出しにくくなります。
DXが現場に根づききる前に「次はAXです」と新しい旗が立つ。
これは個人の問題ではなく、情報が消費される速さの問題です。
3つ目は、知っている側に立てる安心感です。
新しい言葉を知っていると、少しだけ先を行っている気持ちになれます。
正直に書くと、私もこの3つ目の側にいます。
生成AIの研修をしている立場として、新しい言葉を使いたくなる瞬間は何度もありました。
だからこそ、自分への戒めとして書いています。
「新しい考え方には、新しい名前が必要では?」
もちろん、名前そのものは必要です。
名前がなければ考え方を共有できませんし、AXという考え方の中身は正しいと思います。
AIに何を任せ、人は何を担うのか。そこから仕事を組み立て直す発想は、これからの会社に欠かせません。
問題は名前ではありません。
名前をつける人はいても、それを現場の言葉に訳す人がいないことです。
入口は正しいのに、出口がない。新しい言葉は、講演のスライドや会議の資料の中では生きています。
けれど、朝礼で使える言葉にはなっていないのです。
現場の言葉に訳すと、AXは「AIに下書きさせて、人が確かめる働き方」
では、AXを現場の言葉に訳してみます。荷物の運び方にたとえると、こうなります。
- これまで:荷物を歩いて運ぶ(紙とハンコ、手作業)
- DX:トラックを入れて、人が運転して速く運ぶ(パソコンやシステムで効率を上げる)
- AX:自動で走るトラックに行き先だけ伝えて、運ぶのは任せる(生成AIに仕事の一部を任せる)
さらに、明日の朝礼で使えるところまで落とすと、こうなります。
「AIに下書きをさせて、人が確かめる働き方」
これなら、横文字が苦手な社員にも伝わります。そして、今日から始められます。
ここに、地方の会社にとって希望のある話があります。
DXが途中の会社ほど、実は有利かもしれないということです。
古い仕組みを何年もかけて整えてからAIへ、という順番を踏む必要はありません。
固定電話の時代を飛ばして、いきなりスマートフォンが広まった国があるように、途中の段階を一足飛びに越えることができます。大きなシステムに何百万円もかける前に、月数千円の生成AIで試せる時代です。
原材料も人件費も上がり続けるなかで、削れるのは「無駄な時間」だけです。
見積の返信メール、会議の議事録、求人票の文面。まず1つ、AIに下書きをさせてみる。
それが、どんな用語の解説よりも早くAXを理解する方法です。
横文字を覚えるより先に、1つ触ってみる
研修で私がいちばん大事にしているのは、説明の時間を短くし、受講者が自分の手で触る時間を長くすることです。言葉の定義を覚えた人より、1回でも自分の仕事で使ってみた人のほうが、確実に次へ進みます。
触る環境がすべてだと、現場に立つたびに感じます。
AXという言葉を社内で広める必要はありません。広めるべきなのは、「この仕事、AIに下書きさせてみた」という小さな実例のほうです。
隣の席の人が使っているのを見た社員は、どんな研修資料よりも早く動き出します。
あなたの職場で、説明なしに通じるカタカナ語はいくつありますか?
DX、GX、AX。これからも、新しい言葉は生まれ続けます。
そのたびに追いかける必要はありません。
大切なのは、今ある言葉を1つずつ、自分たちの現場の言葉に訳していくことです。
「それって、うちの仕事で言うと何?」
この問いを持ち続けることが、どんな新しい言葉よりも確かな変革の第一歩になります。
最終学歴より、最新学歴。
何を知っているかではなく、今日なにを触ったかで会社は変わります。
石川・北陸の中小企業こそ、横文字に振り回されずに一足飛びで進めるはずです。
言葉の説明で終わる研修ではなく、自社の仕事に合わせて、社員が自分で使い続けられるところまで一緒に進めます。
自社の仕事の言葉で、生成AIの使いどころを整理する研修はこちらです。
https://solobizjourney.com/dx-kenshu/

