
最近いただくセミナー・研修のご依頼は、製造業と、介護・福祉の法人が増えています。
石川県内だけでなく、隣県からも届くようになりました。
そして私は、そのほぼすべてを Gemini から始めています。
先に断っておきます。新しいものを知らないから、ではありません。
世の中では AIエージェントが話題になっていて、私自身も自分の仕事では毎日そちらを触っています。
それでも、企業や施設に入るときの1歩目は Gemini にしている。
この記事に書くのは「どのAIが優れているか」ではなく、「どれを最初に触らせるか」という順番の判断です。
実際にやっている順番は、この4つです
研修で組んでいる順番は、だいたい決まっています。
- Gemini を触ってもらう
- Gemini の Gem に、その職場の書き方を覚えさせる
- NotebookLM に、自分たちの資料を溜める
- 溜めたものから引く
言い換えると、まず触る、自分たちの型を置く、資料を溜める、そこから引く。この順番です。
介護・福祉の現場では、3つ目が特にはっきりした形で使われています。
会議や申し送りの音声を NotebookLM に入れて、議事録を起こす。
手で打ち直していた時間が、そのまま浮きます。
Gem のほうは、その施設の言い回しや様式を覚えさせておく使い方です。
細かい作り方はここでは書きません。
要点は、どちらも「その職場にすでにあるもの」を材料にしている、という一点です。
なお、音声を扱うときは、録音してよいかの確認と、音声ファイルをどこに置くかを先に決めてください。ここだけは道具の話より前に決めるべきことです。
なぜ企業の生成AI研修は Gemini から始まるのか
理由は、性能ではありません。
現場のパソコンには、もう Excel と Word があります。Microsoft を使っていない会社でも、Google Workspace のスプレッドシートとドキュメントで日々が回っている。表と文書は、すでにそこにあります。
ここに、生成AIだけを別の場所に置くとどうなるか。
書きかけの文章をコピーする。別の画面に貼る。返ってきた文章をまたコピーする。
元の場所に戻して整える。この往復が生まれます。
研修の当日は、全員が「便利ですね」と言います。
問題はその翌週です。往復が発生した業務は、忙しい週に必ず飛ばされます。
そして一度飛ばされた手順は、戻ってきません。
さきほどの議事録の話も、同じところで決まります。
音声から起こした議事録が、そのまま普段使っているドキュメントに残らないなら、結局は清書する人が必要になる。
清書する人が必要な仕組みは、その人が休んだ日に止まります。
だから私が最初に見ているのは、AIの賢さではなく、その現場が毎日開いているファイルの隣にあるかどうかです。
入口に必要なのは、賢さではなく往復の少なさです
私は道具の優劣で入口を決めていません。地続きかどうかで決めています。
性能で選ぶと、いちばん賢いものが入口になります。ですが入口に必要なのは賢さではありません。
往復の少なさです。ここを取り違えると、「いちばんすごいAIを入れたのに、誰も使っていない」という、いま各地で起きている状態がそのまま再現されます。
介護なら、議事録と申し送り。製造なら、日報と帳票。
どちらも、毎日誰かが必ず開いているものです。
そこの隣に置ける道具から始めれば、研修が終わったあとに残る確率が上がります。
逆に言えば、いくら賢くても、毎日開くファイルから遠い場所にある道具は、最初の1つには向きません。
これは道具選びの話に見えて、実際は定着の話です。
地方の中小企業や福祉法人で、生成AIの担当者を専任で置ける組織はほとんどありません。
担当者は現場を持ちながら片手間で回します。片手間で回るかどうかは、往復の回数で決まります。
AIエージェントは、いつ現場に入るのか
いま話題になっているAIエージェント——Claude Code や、ChatGPT の Codex のようなものです。
指示を出すと、複数の作業を続けて自分で進めてくれる道具だと思ってください。
道具としては、強いです。私は自分の業務でこちらを使っていますし、できることの幅は Gemini の使い方とは別次元にあります。
そのうえで、正直に書きます。
2、3か月後、あるいは半年後に、企業や施設に向かって「これを入れましょう」と言える環境になっているかどうかは、私にはまだ分かりません。
触ってみて強いことは分かる。ただ、現場に渡したときにどうなるかは、まだ見えていない。
分かったふりをして勧めるのが、いちばんまずいと思っています。
順番の話としてだけ、一行置いておきます。
エージェントは入口ではありませんが、無関係でもありません。
触る土台ができた現場から順番に届きます。
土台というのは、資料が溜まっていて、誰がどこに何を置くか決まっていて、片手間でも回っている状態のことです。その状態を作らずにエージェントだけ先に入れても、動かす人がいません。
あなたの現場が毎日開いているファイルは、どこにありますか
明日からできることを1つだけ書きます。
新しいAIを探す前に、自分の職場が毎日開いているファイルを3つ書き出してください。
ファイル名でかまいません。それが表計算なのか、文書なのか、紙なのか。
どこに置いてあるのか。3つ書き出すと、次に触るべき道具は、だいたい自動的に決まります。
私が研修の設計で最初にやっているのも、結局これと同じことです。
すごいものを紹介する仕事ではなく、その職場がすでに毎日開いているものの隣に、1つだけ置く仕事だと思っています。
あなたの現場が毎日開いているファイルは、どこにありますか。
研修のページ: https://solobizjourney.com/dx-kenshu/
顧問(研修のあと、続かない状態を減らす継続伴走): https://solobizjourney.com/dx-komon/

