
「その業務、社内で一人しかやっていないんです」
AIの相談を受けるとき、かなりの割合でこの一言から始まります。
そして次に来るのが「その作業をAIにやらせられませんか」です。
気持ちはよく分かります。ただ、ここで作業から手をつけると、たいてい止まります。
なぜ、一人で回している業務にAIを入れると止まるのか
一人でやっている業務には、手順書がありません。
あるように見えても、実際に動いているのは本人の頭の中の判断です。
この条件のときはこっち、これは絶対にやらない。
説明した経験がないので、本人にも見えていません。
ある施設で、シフトを作れる人が1人しかいませんでした。
作り方を聞いても、出てくるのは手順ではなく「あの人とあの人は同じ日に入れない」でした。
この状態のままAIに希望を伝えても、返ってくるのは一般的なシフト表です。
表としては悪くありませんが、その施設では使えません。
入れてはいけない組み合わせを、AIが知らないからです。
AIに渡せるのは作業です。ですが、詰まっていたのは作業ではありませんでした。
私も7年、そこから抜けられませんでした
個人事業主として7年以上、基本は一人でやってきました。
ただ、その7年のほとんどは「一人でやるしかなかった」だけです。
外注も、仕組み化も、結局は自分の頭の中を先に文章にする必要があって、忙しいときほどそれができない。忙しいから外に出せず、外に出せないから一人で抱える。この輪から抜けられませんでした。
2か月前に、AIエージェントのチームを作りました
AIエージェント(人の代わりに、複数の作業を続けて行うAI)を、役割ごとに分けて使い始めました。
まだ2か月です。
やらせているのは、作業の代行ではありません。セミナーの企画を一緒に考える。
目標を決めて、そこまでの段取りを詰める。つまり、考える相手として使っています。
渡そうとして渡せなかったものもあります。営業です。相談はできても、代わりに行ってはもらえない。
ここはこれまで避けてきた仕事なので、向き合うしかないと思っています。
人を増やさずに仕事を増やす働き方を、ソロプレナーと呼ぶそうです。
7年やってきて、私はこの言葉を一度も名乗ったことがありませんでした。
一人には、会議がありませんでした
会社には会議があります。
良し悪しは別として、「これでいいと思う?」と聞く場が、制度として置かれています。
一人には、それがありません。
判断が合っているか確かめないまま、7年間、全部決めてきました。
足りなかったのは手ではなく、壁打ちする相手でした。
そして、これは社内で一人分の仕事を抱えている人も同じです。
組織図の上では組織の一員なのに、その業務については聞く相手がいない。
シフトを作っている人に「これでいいと思う?」と聞ける相手が、社内にいますか。
AIエージェントを入れる前に、何を決めておく必要があるのか
会話で動き出すことと、翌週も回ることは違います。
回すために要るのは、その人の判断基準です。
どういう条件でどちらを選ぶか。何は絶対にやらないか。迷ったとき、誰に確認するか。
一人でやってきた人は、これを口に出したことがありません。
だから、外から誰かが聞き出す必要があります。設定という作業の本体は、ここです。
ここを飛ばすと、動いた初日はうまくいきます。止まるのは二週目です。
少し条件の違う話が来たときに判断できず、結局その人のところへ戻ってくる。
あの人しかできない、が元に戻ります。
明日からできる3つ
- 社内で「この人しかやっていない」業務を3つ書き出す。ツールの話はしない
- その3人に30分ずつ時間を取り、「迷ったとき、何で決めていますか」と聞く
- 答えがすぐ出てこなかった業務が、最初にAIエージェントを入れる場所です
3つ目が肝心です。すらすら答えられる業務は、実はもう属人化していません。
その人が優秀だから、ではないかもしれません
その業務にその人しか残らなかったのは、能力の差ではなく、聞く相手がいないまま任せ続けたからかもしれません。
人手を足す前に、聞く相手を用意する。順番は、たぶんこちらです。
一度きりの研修では、判断基準を聞き出すところまでは届きません。
継続して伴走する形の相談も受けています。→ DX顧問について

