
「作れること」より、「誰が作ったかを自分で言えること」に価値があります。
セミナーの申込が、いま何名になっているか。
知りたいのはそれだけなのに、毎回ブラウザで告知ページの管理画面を開いて、一覧をスクロールして、数えていました。
いまは、Claude Codeで組んだエージェントのチームがそれをやっています。
その中のClaude in Chromeが、私の代わりに画面を見て、人数を取ってきます。
ただ、これは既製のAI拡張機能がブラウザを操作しているだけです。
私がコードを書いたわけではありません。
その作業を続けているうちに、別のことを知りました。
教えてくれたのは、私が講師をしている職業訓練の受講生です。
Chromeの拡張機能は、自分で作れる。
先に正直に書きますが、私はまだ1つも作っていません。
それでもこれは、多くの中小企業にとってかなり大きな話だと思っています。
拡張機能には3種類あって、うち2つはストアに出しません
「拡張機能」と聞いて思い浮かぶのは、Chromeウェブストアで検索して入れるものだと思います。
翻訳、広告のブロック、パスワードの管理。あれは3種類のうちの1つです。
- 既製品:世界の誰かが作り、ストアで配っているもの
- 社内用:自社で作り、自社のパソコンにだけ入れるもの
- 自分用:自分で作り、自分のパソコンにだけ入れるもの
下の2つは、ストアに出しません。審査も、公開も、料金も要りません。
フォルダを1つ作って、Chromeの設定画面から「読み込む」を選ぶだけで、その日から動きます。
ここが、いちばん知られていないところだと思います。
なぜ、うちの業務に合う拡張機能は売っていないのか
探しても見つからない、という経験をされた方は多いはずです。
売っていないのは、需要がないからではありません。
うちにしか需要がないからです。
既製品は、世界中の人が同じように困っていることにしか作られません。
翻訳は誰でも要る。広告も誰でも邪魔だと思う。だから存在します。
一方で、多くの会社が本当に困っているのはこういう場所です。
自社の受注管理画面の、この列だけを毎回コピーしている。
取引先ごとに違う書式へ、毎回同じ順番で写している。
その画面を使っているのは、世界で自社だけです。
同じ穴に困っている人が世界に一人しかいないなら、その道具は誰も作りません。
作れるのは、自分たちだけです。
材料は、ホームページを作るのと同じです
中身はHTMLとCSSとJavaScriptの3つです。
ホームページを作るのと同じ材料で、置き場所がブラウザの中になっただけです。
設計図を1枚と、やらせたい処理を1本。最小の構成はこれだけです。
そして、この程度の分量なら、いまは生成AIが書きます。
「この画面のこの表を、この形で書き出したい」と伝えれば、動くものが返ってきます。
ですからこの記事では、作り方は書きません。
作り方より先に、決めておくことがあるからです。
ここからが本題です。拡張機能は、開いている画面を全部読めます
拡張機能は、ブラウザが表示している画面の中身を読み取れます。
読めるから、必要なところを取り出したり、書き換えたりできる。便利さの正体はそこです。
裏返すと、こうなります。
自社の基幹システムを開いた状態で入れてある拡張機能は、その画面に出ている取引先の名前も、金額も、読める位置にいます。
これは欠陥ではなく、拡張機能という仕組みそのものです。
だから問われるのは「便利かどうか」ではありません。
「それを誰が作ったか」です。
今日安全だった拡張機能が、明日も安全とは限らないのはなぜか
拡張機能は、作者ごと売買されることがあります。
個人が作って何万人にも使われるようになったものを、別の誰かが買い取る。よく指摘される構造です。
そして拡張機能には自動更新があります。
買った側が中身を差し替えれば、利用者が何もしなくても、次の更新でそれが入ります。
つまり、入れたときに安全だったことは、いま安全である証明になりません。
星の数もレビューも、過去の評価です。
だから自作の価値は、便利さではなく「中身を自分で言えること」
ここが、この記事でいちばん言いたいところです。
自分で作れば安全、ではありません。自分で書いたものにも間違いは入ります。
自作の価値は、検証できることです。
- 誰が書いたのか
- どの画面を読んでいるのか
- 読んだものを、どこかに送っていないか
この3つを、自分の言葉で説明できる状態。それが自作で手に入るものです。
説明できない道具を、業務の画面の上に置かない。
持ち帰っていただきたいのは、この一線です。
会社で使う前に、確認すること4つ
1. 管理者に、先に聞く
会社のパソコンは情報システム担当の管理下にあり、拡張機能の追加そのものを止めてある会社も多くあります。これは邪魔をしているのではなく、正しい設定です。
順番を飛ばすと、道具の話が信用の話に変わってしまいます。まず聞く。
2. 権限を絞る
拡張機能には「どのサイトで動くか」を書く欄があります。
「すべてのサイト」ではなく「この管理画面だけ」と指定できます。作るときに必ず絞ってください。
3. 外に送る処理を入れない
社内のデータを外部のサービスへ送る処理を1行入れた時点で、それは業務システムからの持ち出しです。手元で完結する作りにする。
4. 相手のサービスの規約を見る
自分のアカウントで見えている情報を自分の手間を減らすために整えるのと、他人のサイトへ機械で繰り返しアクセスするのは、別の話です。相手が外部のサービスなら、規約を一度読んでください。
何を道具にして、何をAIに頼むか
私がやりたいことは、実は2つに割れます。
- 申込の一覧を開いて、人数と名前を取ってくる
- その回に合わせた告知メールの文面を作る
前者は、毎回まったく同じです。
同じ画面を開いて、同じ場所を見て、同じ形で書き出す。
こういう作業は、道具にする価値があります。
後者は、毎回変わります。
対象も、時期も、書くべき注意事項も違う。
こちらはAIに都度頼んだほうが早い。
同じ形の作業だけが、道具にする価値があります。
判断が入る作業を無理に道具へ閉じ込めると、条件が変わるたびに作り直すことになります。
自動化が続かない会社は、たいていこの線引きをしないまま「全部やらせよう」としています。
割ってから決める。
ここを飛ばさないでください。
「動いた」と「安全」は、別の話です
繰り返しますが、私はまだ1つも作っていません。
いまやっているのは、既製のAI拡張に画面を見てもらって、人数を取ってくるところまでです。
それでも先に確認事項を並べたのは、順番がそうだからです。
作ってから考えると、確認するのは事故のあとになります。
うちの管理画面に合う道具は、世界中の誰も作りません。
だから自分たちで持つ、という選択があります。
そのときに要るのは技術力よりも、何を読ませて、何を読ませないかを自分で決める力です。
その線引きは、外注できません。

