
量は足りていた。偏っていただけだった。
「作るは日本トップクラス、検証はゼロ」と言われた
生成AIの研修を仕事にしている人間が言うのも妙な話ですが、先日ふと不安になりました。
「自分は本当に、生成AIを使いこなせているんだろうか」
毎日使っています。土日も使っています。使わない日はまずない。
だから当然、使いこなしている側だと思っていました。
そこで、過去1か月の自分の使い方をAI自身に見てもらいました。返ってきた一行目がこれです。
「作る領域は日本トップクラス。ただし、検証はゼロです」
言われた瞬間、反論できませんでした。作るのは確かに毎日やっている。
でも「確かめた」記憶が、1か月分どこにもない。
生成AIの活用度は、使用頻度では測れません。
「作る」だけが回っていて「確かめる」「回し続ける」が空白でも、毎日使っている感覚は成立してしまう。
これが今回いちばん怖かったところです。
自分のAI利用履歴を棚卸しさせるには、どう頼めばいいか
やったことは単純です。
過去1か月の会話履歴をAI自身に読ませて、棚卸し(使い方の総点検)をさせました。
使ったのは、この発注書(プロンプト)です。そのまま貼ります。
直近1か月、私があなたに頼んだ内容を棚卸ししてください。
出力:
① 用途別の実態(何に、どのくらいの頻度で使っていたか/表形式)
② 使えていない領域を優先順に5つ(各に「なぜ今それが必要か」を1行)
③ 今日30分で着手できるものを1つだけ指名
※注意点がひとつ。 これは「過去の会話を参照する機能」が使えるツールでないと動きません。
お使いのツールにその機能がない場合は、上のプロンプトの下に、直近1か月でAIに頼んだことを10個、自分で箇条書きにして貼ってください。
精度は落ちますが、狙っている効果はほぼ同じです。むしろ手で書き出すぶん、自分で気づくことが多い。
そしてこのプロンプトの肝は、③の「今日30分で着手できるものを1つだけ指名」です。
②で課題を5個出させると、人は満足します。「なるほど、自分にはこの5つが足りていないのか」と納得して、そのままブラウザを閉じる。
私も何度もやりました。だから最後に、AI側に1個だけ指を差させる。
選択肢を潰して、逃げ道をなくすためのひと手間です。ここは真似する価値があると思います。
出てきた実態|「作る」だけが回っていた
出てきた1か月分の実態は、こんな内訳でした(業務カテゴリだけに抽象化しています)。
| 用途 | 頻度 |
|---|---|
| 記事・コンテンツの構成づくり | ほぼ毎日 |
| 研修教材の作成 | 週数回 |
| 補助金・制度まわりの調査 | 随時 |
| 日程調整・メール下書き | 随時 |
見ていただくと分かる通り、量は多いんです。
回数だけなら、たぶん県内の平均をかなり上回っている。
だから私は「使えている」と思い込んでいました。
でも、並べ直すと性質が揃っている。
全部「何かを作る」です。構成を作る、教材を作る、文章を作る。
調べものも「資料を作るための調査」でした。
作る、作る、作る、作る。1か月分きれいに一色でした。
指摘された3つの空白。自分でも堪えたのは3つ目
AIが返してきた「使えていない領域」から、特に効いた3つを書きます。
① 公開した後の数字を、一度もAIに戻していない
記事も教材も、作って出したところで線が切れていました。
どれが読まれてどれが読まれなかったのか、その結果をAIに渡して次の判断材料にする、という往復をゼロ回しかやっていない。作りっぱなしです。
② 自動で回っているものが、1本しかなかった
定期実行(決めた時間に勝手に動く仕組み)として組んであるものが、たった1本。
つまり残りは全部、私が話しかけないと何も起きない。
私が忙しくなった週は、AI活用も同時に止まる構造でした。
エースが休むと業務が止まる会社と、まったく同じ形です。
③ 提案されたのに実装していない自動化が、3つ溜まっていた
これがいちばん堪えました。
AI側からは、ちゃんと提案されていたんです。「これは自動化できますよ」と。
私も「たしかに」と返している。返した記録まで残っている。
そのうえで、1か月経って3つとも手つかずでした。
「気づく」は毎回できていた。
「仕組みにする」で毎回止まっていた。
1か月分の「やろうと思ったまま」の在庫が3つ。
研修で受講者にさんざん「まず1本組みましょう」と言っている本人が、です。
なぜ、講師の自分でもこうなるのか
ここからは、私個人の反省というより構造の話です。たぶん読者の皆さんにも、そのまま当てはまります。
理由はシンプルで、手応えのタイミングが違うからだと思っています。
- 「作る」は、頼んだ瞬間に成果物が出る。10秒で手応えがある
- 「確かめる」は、数字が動くまで手応えが来ない。早くて数週間
- 「回し続ける」は、組んだ日がいちばん面倒で、ラクになるのは1か月後
人間は、手応えのある行動を無意識に繰り返します。
だから放っておくと、誰でも「作る」だけに寄っていく。 こ
れは意志の弱さでも、勉強不足でもありません。
よく指摘される構造として、AI活用が途中で止まるのは知識不足ではなく、手応えの偏りによるものだ、と私は見ています。
そしてこの話は、そのまま会社の話になります。
石川県内の中小企業で「うちもAI導入しました」という会社が増えました。
話を聞くと、たいてい文章作成と議事録です。
つまり「作る」。悪いことではまったくない、入口として正しい。
ただ、そこで止まったままなら、効果は「ちょっと時短できた」で頭打ちになります。
人手不足そのものは1ミリも動かない。
人が足りない現場で本当に効くのは、「作る」の速さより、自分が話しかけなくても回っている仕組みが何本あるかです。
社長が出張中でも、担当者が退職しても、動き続ける本数。
ここが1本なのか10本なのかで、来年の消耗が変わります。
気合いの問題ではないので、気合いでは直りません。
仕組みで補うしかない。
私はそう結論づけて、まず溜まっていた3つのうち1つを、その日のうちに組みました。
結び|今日、10個書き出してみてください
説教をするつもりはまったくありません。私自身が1か月分の宿題を出された側なので。
ただ、ひとつだけ試してほしいことがあります。
直近1か月で、あなたがAIに頼んだことを10個書き出してみてください。
そのうち、何かを「確かめる」ために使ったものは、何個ありますか。
そのうち、あなたが話しかけなくても動いているものは、何本ありますか。
ゼロでも大丈夫です。私も先月までゼロでした。
むしろ、そこに空白があるということは、まだ伸びしろが手つかずで残っているということです。
量はもう足りている。あとは、向ける先を1つずらすだけです。
そして、たぶんこれは一人でやるより、横から誰かに指を差してもらったほうが早い。
私が今回AIにやってもらったのは、まさにそれでした。
もし社内で「うちのAI活用、どこが空白なんだろう」という話になったら、その棚卸しから一緒にやりましょう。
ツールの使い方を教えて終わり、ではなく、貴社が話しかけなくても回る仕組みを一緒に組むところまでが私の仕事です。
金沢から、地上戦でお付き合いします。

