BCCの入れ忘れは「気をつける」では防げない|Gmail一斉送信を生成AIに任せて分かったこと

注意力は消耗品。疲れた夜には、必ず切れる。

BCC欄に15人。送信ボタンの前で手が止まった

セミナーの案内メールを送ろうとして、ふと手が止まりました。

BCC欄に、参加者15人分のアドレス。

※BCCとは、受信者同士にお互いのメールアドレスが見えない送り方です。
反対にCCで送ると、受け取った全員に、他の全員のアドレスが見えてしまいます。

もし今、この15人をCC欄に入れて送信ボタンを押していたら。

参加者全員のアドレスが、参加者全員に見える。

それは私の不注意では済まず、参加してくださった方々の連絡先を、本人の了解なく他人に渡してしまうということです。

しかも冷静に考えると、条件が悪い。
私はこの作業を月に何度もやっています。
たいてい一人で、たいてい夜です。

その日は無事に送れました。
でも「今日は大丈夫だった」と「この先もずっと大丈夫」は、まったく別の話です。

なぜBCCの入れ忘れは注意では防げないのか

誤送信は「うっかり」で起きるのではなく、条件が揃ったときに起きる。
私はそう考えるようになりました。その条件とは、多くの現場でこの4つです。

  1. 一人で完結していて、確認する人がいない
  2. 終業後の、疲れた時間帯に送っている
  3. 「今日中に送らないと」という締切がある
  4. 宛先を毎回、手で入力している

一つずつ見れば、どれもよくある話です。でもこの4つが同じ日に揃ったとき、人間の注意力は必ず負けます。注意力は消耗品で、疲れた夜にいちばん減っているのに、メールを送るのはたいてい疲れた夜だからです。

そして書きながら気づきました。私は4つ全部に当てはまっています。

「気をつけよう」と決意しても、決意は4つの条件を1つも減らしてくれません。
減らすべきは注意する回数のほうです。

生成AIに「間違えない設定を作って」と頼んでみた

そこで生成AIに相談しました。頼んだ内容はシンプルです。

「Gmailの一斉送信で、BCCを絶対に間違えない設定を作ってほしい」

期待していたのは「この設定をオンにすれば大丈夫です」という答えでした。
ところが、返ってきたのは設定ではありませんでした。

最初に指摘されたのは、意外な事実です。

AIは、私のGmailの宛先欄を見ることができない。

メールの文面を貼り付けてチェックさせることはできます。

でも、CC欄に誰が入っているか、BCC欄に入れたつもりが実はCC欄だった——そこはAIからは見えない。つまり「送る前にAIに見せれば安全」は、そもそも成立しないのです。

じゃあAIは役に立たないのか。そうではありませんでした。

生成AIはメールの誤送信を防げるのか

返ってきた答えを整理すると、3つの階層に分かれていました。

階層1:文面をチェックさせる

メールの本文をAIに渡して確認してもらう方法です。

ただし、AIにできるのは「複数の方に送るメールのようですが、BCCで送りますか?」と聞き返すことまで。

宛先欄は見えないので、注意喚起の域を出ません。ないよりはましですが、いちばん弱い対策です。

階層2:Gmail側の設定を変える

Gmailには、送信ボタンを押したあと数十秒以内なら取り消せる機能があり、設定画面からその猶予時間を延ばせます。

また、連絡先でグループを作っておけば、BCC欄にグループ名を入れるだけで全員を一括指定できます。

「To欄は自分、BCC欄はグループ」という型をテンプレートとして保存しておく手もあります。

共通するのは、手で入力する回数そのものを減らすという方向です。
15人分を毎回手で入れるのと、グループ名を1つ入れるのとでは、間違える機会の数が違います。

階層3:そもそも宛先を手で入れない

メールの下書きを作る作業ごと仕組みにしてしまい、宛先がBCC以外に入りようがない状態を作る。
間違える工程自体をなくすので、根本から直るのはこの階層だけです。

ここまで読んで、「階層3なんて自分には無理だ」と思われたかもしれません。
私も、人ごとならそう思ったはずです。

ところが。

私はすでに階層3にいた

答えを読みながら気づきました。私は参加者への連絡メールを、もう自分では書いていません。

カレンダーからセミナーの日時を取ってくる。過去に送った連絡メールの型を引き継ぐ。宛先をBCC形式にした下書きまで自動で作らせる。私がやるのは、下書きを確認して送信ボタンを押すことだけです。

この仕組みを作った理由は、時短でした。毎回同じようなメールをゼロから書くのが面倒だったからです。ミス防止のためだなんて、一度も考えたことがありませんでした。

でも結果として、宛先を手で入力する工程が消えていた。BCCの入れ忘れが起きる場所そのものが、なくなっていたのです。

面倒だから自動化したことが、いちばんの安全装置になっていた。

これがこの記事でいちばんお伝えしたいことです。

【解説】そもそも「スキル」とは何か

私の仕組みは、生成AIの「スキル」という機能で動いています。
聞き慣れない言葉だと思うので、丁寧に説明させてください。

一言でいうと、スキルとは、生成AIに前もって渡しておく「作業手順書」です。

たとえば、新しく入ったスタッフに毎回口頭で「この作業はこうやって、ここに気をつけて」と説明するのは大変です。だからマニュアルを1枚作って渡しておく。次からは「あれ、お願い」で通じるようになる。スキルは、このマニュアルにあたります。

毎回の指示(プロンプト)との違いはここです。

プロンプト(AIへのその場の指示文)は、口頭指示と同じで、言い忘れれば抜けますし、日によってブレます。一方スキルは保存された手順書なので、必要な場面でAIが自動的に開いて、その通りに動きます。

ここが誤送信防止の肝です。「今日は疲れていたからBCCを忘れた」が、起きなくなる。

似た機能に「カスタム指示」というものもあります。

こちらは常に効いている性格設定のようなもので、「結論から話して」といった全体の好みを伝えるのに向いています。スキルは、特定の作業のときだけ開かれる手順書。

「セミナーの連絡メールを作るとき」のように、場面が決まっている作業に向いています。

では、手順書の中には何を書くのか。専門知識ではありません。

普段自分がやっている手順を、日本語の文章で書くだけです。
プログラミングは要りません。実際に私の手順書に入っているのは、こんな項目です。

  • どこから情報を取るか(カレンダーからセミナーの日時を取る)
  • どういう形で作るか(宛先は必ずBCC形式にする)
  • 絶対にやらないこと(送信はしない。下書きを作ったところで止める)

この「絶対にやらないこと」を書けるのが、スキルのいちばんの価値だと思っています。
人間のルールは疲れると崩れますが、手順書に書いたルールは、毎回同じ形で守られます。

なお「スキル」はClaudeというAIの機能名ですが、ChatGPTの「GPTs」、Geminiの「Gem」も、自分専用の手順書をAIに持たせるという発想は同じです。お使いのツールで探してみてください。

難しそうに聞こえたかもしれませんが、中身は日本語で書いた手順書です。
私も最初は「よく分からないもの」だと思っていました。

ミスを減らすのは注意力ではなく、手順

BCCの入れ忘れは、「気をつける」では防げません。防ぐのは、間違えようのない手順です。

そして、手順を固定するという作業は、いま生成AIがいちばん得意なことです。

きっかけは「面倒だから自動化したい」で構いません。私がそうでした。
楽をするために作った仕組みが、気づけば自分と、メールを受け取る相手を守ってくれています。

安全は、後からついてきます。

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