「パブリックコメントは意見しても届かない」は逆だった|意見が1件も来ない案件が大半という現実

投票日は、年に数回しかない

世の中、思いどおりにいかないことのほうが多い。

物価は上がるし、制度は気づいたら変わっているし、決まった後で「なんでこうなった」と思うことばかりだ。

それでも選挙には行く。国民の権利だし、そこは譲りたくない。

ただ、投票日は年に数回しかない。
では残りの三百数十日、一庶民にできることは本当に何もないのか。

ある。しかもオンラインで、15分で終わる。

パブリックコメントという制度がある

パブリックコメント

(正式には「意見公募手続」。以下パブコメ)とは、国や自治体が計画やルールを決める前に、その案を公開して市民から意見を募る手続きのことだ。

制度の存在をきちんと理解したのはここ最近のことだ。

ただ、金沢市にも石川県にも、この入口はちゃんと開いている。

次に自分の関心のあるテーマ——DXでも、中小企業支援でも——で募集が出たら、そのときは迷わず出すつもりでいる。

誰が言ったかより、その意見が制度の記録に載ることのほうが大事だと思っているからだ。

パブリックコメントに意見を出すと、どうなるのか?

初めての方に向けて、押さえるべきポイントは3つだけだ。

① 決まる「前」に、案が公開される

すでに決定した話への文句ではない。
まだ案の段階で、これから決めるものに対して意見を言う仕組みだ。順番が違う。

② 意見の提出期間は、原則30日以上

締切まで一か月ある。「今日知って、今日出す」必要はない。

③ 行政には、意見と「それに対する行政の考え方」を公示する義務がある

ここが一番大事だ。出された意見は、行政の回答とセットで公開される。
つまり、黙殺して終わりにはできない。

「どうせ形だけでしょう」と思った方へ。

形だけかどうかは、公示された回答を読めば誰でも検証できる。

採用されなかったとしても、意見と回答は記録に残る

これは想像以上に強い。記録に残った意見は、次の改定のときにもう一度掘り返されるからだ。

「届かない」のではなく、「誰も出していない」

ここからが本題だ。

私は長らく、「意見を出しても、どうせ握りつぶされる」のだと思っていた。

だが、実際に国のポータルe-Gov(イーガブ/各省庁の行政手続を集約した政府の電子窓口)でパブコメ案件を眺めてみると、様子が違う。

意見が1件も集まらなかった案件が、大半を占めている。

握りつぶされているのではない。意見欄が空欄のまま締め切られているのだ。

自治体側もこの状況は把握していて、課題として「制度の認知度の低さ」「資料が多く、内容が難しい」を挙げている。

さらに、記名式であることが心理的な壁になっているという調査もある。

上越市が実施したアンケートでは、「厳しい意見が言いにくい」と答えた人が36%にのぼった。

つまりこういうことだ。

  • 窓口は開いている
  • 制度上、行政は回答しなければならない
  • なのに、誰も来ない

「意見が届かない」のではない。

「意見が出されていない」

ここを取り違えていると、永遠に何も始まらない。

世界と比べると、日本は「入口だけ開いている」

海外の例を2つだけ、短く挙げる。

アメリカは1946年の行政手続法で、規則制定への市民参加を制度として組み込んだ。

窓口は regulations.gov に集約されている。

米国会計検査院(GAO)が10省庁52部局に調査したところ、

ほぼすべての部局が「市民の意見が最終的な規則に実質的な変更をもたらした」と回答している。
意見が制度を動かしたという事実が、政府自身の調査で可視化されている。

台湾の政策提案プラットフォーム「Join」には、もっと露骨な仕掛けがある。

60日間で5,000人以上の賛同が集まれば、担当部門は2か月以内に書面で回答する義務を負う

2025年1月までに346件が賛同ラインを超え、うち172件が実際に政策として採択された。
登録ユーザーは150万人。人口約2,300万人の国で、である。

ここで日本の制度を腐すつもりはない。むしろ逆だ。

日本は「意見を出せる」。
台湾は「意見に応えさせられる」。 

入口の設計はどちらも正しい。違うのは、出口の見え方だ。
出した意見がどう扱われたかが目に見える形で返ってくるから、人が動く。

日本の入口は正しく設計されている。弱いのは、出口が市民に見えていないことだ。

これは政治の話ではなく、DXの話だ

ここが、この記事で一番書きたかったところだ。

考えてみてほしい。パブコメの意見募集ページも、提出フォームも、とっくにオンライン化されている
資料はPDFで公開され、フォームから送信すれば受理される。
役所の窓口に行く必要も、紙に書く必要もない。

行政側のデジタル化は、この領域についてはもう終わっている。

足りていないのは、市民の側の「使い方」だ。

  • 探せない — どこに載っているのか分からない
  • 読めない — 資料が数十ページのPDFで、専門用語だらけ
  • 書けない — 何をどう書けばいいのか分からない

この3つで止まっている。窓口の前まで来ることすらできていない。

これは、私が石川県内の企業や自治体で生成AI活用の現場に入るたびに見る光景と、まったく同じ構造だ。

「まずシステムを入れました。使い方は各自で」

このパターンで動いた組織を、私は見たことがない。

ツールを配れば使われる、というのは幻想だ。自治体の生成AI導入でもよく起きる。

「まず職員から。市民向けはその後で」と順番を決めたまま、"その後"が来ない。

窓口だけデジタル化しても、使い方が人の側に渡っていなければ、窓口は空いたままになる

パブコメが「意見ゼロ」で締め切られ続けているのは、市民の意識が低いからではない。

渡すべきものが渡っていないからだ。

そして、ここからが本題の本題である。

探せない・読めない・書けない——この3つの壁は、今の生成AIでほぼ崩せる。

  • 探せない → AIに探させればいい。市の公式サイト、県の公式サイト、e-Gov を横断して締切順に並べさせる
  • 読めない → 数十ページのPDFを投げて「私の業種に関係する箇所だけ抜き出して」と言えばいい
  • 書けない → 下書きを作らせて、自分の現場の事実を書き足せばいい

議事録を3分で作るのも生成AIだが、行政との対話窓口を市民の手に取り戻すのも生成AIだ。

私は後者のほうが、地方にとってはるかに大きいと思っている。

石川県の中小企業が抱えている課題を、いちばん正確に知っているのは県庁ではない。

その会社の社長と現場だ。その情報が、制度の記録に一件も載っていない。
これは、地域にとって明確な損失である。

「時間がない」という方へ。探すのも書くのも、生成AIを使えば15分だ。実際にやってみよう。

自分の住む市区町村のパブリックコメントは、どうやって探せばいいのか?

ChatGPT、Claude、Gemini——ウェブ検索ができる生成AIなら何でもいい。以下をそのままコピーして、【 】の中だけ書き換えて貼り付けてほしい。

【第1弾|自分の町のパブコメを探すプロンプト】

あなたは行政情報のリサーチャーです。
以下の条件で、いま意見を提出できるパブリックコメント(意見募集)を探してください。

【居住地】石川県金沢市 ← あなたの市区町村に書き換えてください
【関心のあるテーマ】DX・デジタル化、中小企業支援 ← 自由に書き換えてください
【今日の日付】2026年〇月〇日 ← 実行日に書き換えてください

【調べる範囲】

  1. お住まいの市区町村の公式サイト内「パブリックコメント」「意見募集」ページ
  2. 都道府県の公式サイト内の同ページ
  3. 国のポータル「e-Govパブリック・コメント」

【出力形式】次の表で、締切が近い順に並べてください
| 案件名 | 実施機関 | 締切日 | 提出方法 | 一次情報のURL |

【重要なルール】
・実際にページを開いて確認した案件だけを挙げてください
・締切が過ぎているものは除外してください
・見つからない場合は、無理に埋めずに「該当なし」と書いてください
・最後に、私の関心テーマに最も近い1件を選び、その案件が私の生活や
仕事にどう関係するかを3行で説明してください

これで、自分の町でいま何が決まろうとしているかが表になって出てくる。ここまで3分だ。

意見の下書きを作る

気になる案件が見つかったら、続けてこれを投げる。

【第2弾|意見の下書きを作るプロンプト】

上記の案件について、私の意見の下書きを作ってください。

【私の立場】〇〇業を営んでいる/〇〇に住んでいる

【現場で困っていること】具体的に3つ

【私がこの施策に差し出せるもの】※ここが一番大事です
自分が持っている経験・データ・場所・人のつながり・時間のうち、
この施策に使えそうなものを書いてください。
(例:自社で試した記録が1年分ある/同業者に声をかけられる/会場を提供できる/試験導入のモニターとして協力できる)

【条件】
・要望より先に「現場ではこうなっている」という事実の報告を書く
・提出資料のどのページ・どの項目への意見かを明示する
・最後に必ず「この施策に、私はこう関われます」という一文で締める
・AIが書いた文章をそのまま出さず、私が体験を書き足す余白を空けておく

このプロンプトで主役は3つ目の「私がこの施策に差し出せるもの」だ。ここだけは、絶対に手を抜かないでほしい。

「素人の意見なんて聞いてもらえない」と思う方がいる。

逆だ。行政に足りないのは専門知ではない。専門家なら審議会にいる。

行政が持っていないのは、あなたの現場の事実データのほうだ。 

何人が困っていて、何時間かかっていて、何が使えなかったのか。
それは、そこにいる人しか書けない。

2つだけ、約束してほしいこと

AIが挙げてきたURLは、必ず自分でクリックして締切と提出先を確認してください。 

生成AIは締切日を実際と違う日付で答えることがあります。ここは人間の仕事です。

そして、AIが書いた文章をそのまま提出しないでください。 

行政が読みたいのは、整った文章ではなく、あなたの現場の事実です。
AIは下書き係であって、代筆屋ではありません。

陳情を増やしたいわけじゃない

最後に、この記事の背骨を書いておく。

私は、意見が増えさえすればいいと思っているわけではない。

要望だけが集まる窓口なら、行政も読むのが辛くなる。 

「あれをやってくれ」
「これが足りない」

が1,000件並んだところで、動かせる予算も人も増えない。

増えてほしいのは、「自分はこの施策にこう関われます」と書ける人のほうだ。

うちには1年分の試行錯誤の記録がある。
同業者に声をかけられる。
会場なら出せる。
モニターとして協力できる。

そう書ける人が10人いれば、その施策は動く。
書けるのは、現場を持っている人だけだ。
石川県の中小企業の経営者は、全員がその条件を満たしている。

投票が「選ぶ」なら、パブリックコメントは「差し出す」だ。

あなたの現場には、行政が持っていないデータがあります。

まずは第1弾のプロンプトを、コピーして貼ってみてください。
3分で、自分の町でいま何が決まろうとしているかが分かります。

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