
放置の原因は、担当者の怠慢ではなく「仕組みの空白」。だから10秒のセルフチェックで抜け出せる。
研修のご依頼をいただくと、私は必ず事前にその会社のホームページを拝見します。
どんな事業をされていて、どんな言葉でお客様に語りかけている会社なのかを知りたいからです。
先日、最近ご縁のあった会社のサイトを続けて2社見て、手が止まりました。
どちらも、アドレスが「http」のままだったのです。
先に結論を言います。これは珍しいことではありません。
そして、放置しているその会社が悪いのでもありません。
今日はこの「誰も悪くないのに危険な状態が続いてしまう構造」の話と、今日からできる10秒の抜け出し方をお渡しします。
httpのままだと、何が起きるのか
「http」と「https」。たった1文字の違いですが、中身は大きく違います。
httpsの「s」は、通信が暗号化されている印です。
この暗号化を担っているのがSSL証明書(通信を暗号化するための電子証明書)と呼ばれるものです。
httpのままのサイトを例えるなら、お店のドアが開けっ放しで、店内の会話が外に筒抜けになっている状態です。具体的には、次の3つが起きます。
- 通信が丸見えになる。 問い合わせフォームに入力された名前・電話番号・相談内容が、途中で盗み見られる可能性があります。
- 第一印象が下がる。 今のブラウザは、httpのサイトを開くと「保護されていない通信」という警告を表示します。初めて訪れたお客様が最初に目にするのが、この警告です。
- 検索で不利になる。 Googleはhttps化されたサイトを優先する方針を公表しています。
怖がらせたいのではありません。
ここで大事なのは、この状態が「気づけばすぐ直せるもの」だということです。
なぜホームページはhttpのまま放置されるのか?
よく見られる構造として、こんな流れがあります。
ホームページは制作会社に外注して作った。納品されたあとの管理は、なんとなく自社に戻ってきた。
ドメイン(サイトの住所)は自動で更新される契約なのに、SSL証明書だけは手動更新だった。
サーバー会社から更新のお知らせメールは届いていたけれど、英語混じりの専門用語だらけで、誰も意味が分からないまま未読フォルダに沈んでいった。
そのうち担当者が代わって、契約情報がどこにあるかも分からなくなった。
この流れの中に、責めるべき人は一人もいません。
外注でプロに頼んだ判断は、正しい判断です。
制作会社も、頼まれた範囲をきちんと納品しています。
担当者も、意味の分からない英文メールを読み解く義務まで負っていたわけではありません。
誰も間違っていないのに、結果として「開けっ放しのドア」だけが残る。
だからこれは個人の問題ではなく、「納品後の運用を誰が担うか」という設計が最初から存在しなかったという、構造の問題なのです。
自社サイトがhttpのままか確認する方法は?
確認は10秒で終わります。ブラウザのアドレスバーに、自社サイトのアドレスを「https://」から手打ちで入力してみてください(例:https://自社のドメイン)。結果は3パターンに分かれ、それぞれ対処法が違います。
- 普通に表示された → https自体は使える状態です。httpで開いたときに自動でhttpsに切り替わらない「転送設定の漏れ」だけが原因なので、レンタルサーバーの管理画面か制作会社への一言連絡で、早ければ5分で直ります。
- 警告画面が出た → SSL証明書の期限切れの可能性が高い状態です。レンタルサーバーの管理画面で証明書の更新(多くのサーバーでは無料のSSLを数クリックで再設定できます)を行うか、契約先に「SSL証明書が切れているようなので更新をお願いします」と伝えれば対応してもらえます。
- そもそも接続できない → SSLが未導入の状態です。契約中のレンタルサーバーに無料SSL機能があれば管理画面から有効化でき、分からなければ制作会社かサーバー会社に「SSLを導入したい」と伝えるところからで大丈夫です。
「制作会社と保守契約を結べばいいだけでは?」という声もあると思います。
それも正解のひとつです。
ただ、月額の保守費用を払う規模ではない会社こそ、この10秒チェックと、次にお話しする方法が効きます。
「読めないメール」は、生成AIに貼るだけでいい
ここが今日いちばんお伝えしたいことです。
放置の出発点は、たいてい「意味の分からないお知らせメール」でした。
サーバー会社から届く、英語混じりの、何をしろと言っているのか分からない通知。
あれが読めないから、そっと閉じる。
それが積み重なって、気づけば数年放置——という流れです。
今は、そのメールをChatGPTやClaudeにそのまま貼り付けて、「このメール、何をすべきか3行で教えて」と聞くだけで答えが返ってきます。
「SSL証明書の期限が○月○日に切れます。管理画面から更新してください」—そこまで分かれば、あとは管理画面を開くか、制作会社に一言連絡するだけです。
「IT知識がないから放置するしかない」という時代は、もう終わりました。
「聞き方さえ知っていれば、誰でも一次対応できる」時代に変わっています。
専門家になる必要はありません。
分からないものを分からないまま抱え込まない道具が、すでに手元にあるのです。
結び:属人化を解く第一歩は「今、アドレスバーを見ること」
ホームページの放置は、会社の中にある「誰も中身を知らない仕事」の代表例です。
逆に言えば、ここを自分の手で確認できたという小さな成功体験は、他の属人化した業務を解きほぐす最初の一歩になります。
まずは今、この記事を閉じる前に、自社サイトのアドレスバーを見てみてください。
そしてもうひとつだけ。
あなたの会社のサイトの管理者メールは今、誰の受信箱に届いていますか?

