
宿題ゼロ。それでも受講生は、勝手に走り出す。
私のハンズオン講義(実際に手を動かしながら学ぶ形式の講義)に、宿題はありません。
それなのに受講生は、講義で本格的に扱う前からnoteを書き始め、NotebookLMで情報を整理し、Claudeとやり取りしてアプリを完成させました。
私は「作ってくれ」とは一言も言っていません。
頼んでいないのに、始まっていた
石川県で職業訓練のDX講座を担当して、今期で6期目になります。
今期も、頼んでいないことが次々に起きています。
ひとつ目。私が「毎日noteを更新しています」と雑談で話しただけで、ある受講生が自分からnoteの投稿を始めました。書き方の講義は、まだしていません。
私は頼んでいません。
ふたつ目。私がClaude(対話型の生成AI)でアプリを作った話をしたら、受講生はさらに上を行きました。
NotebookLM(Googleが提供する、資料を読み込ませて整理・要約できるAI)で情報をまとめ、その材料をClaudeに渡してアプリを組み上げたのです。
「話をした」だけです。私は頼んでいません。
みっつ目。ある受講生は、今後の事業展開を見据えて、事業のマスコットキャラクターまで自分で考え、投稿を始めました。カリキュラムのどこにも、そんな項目はありません。
もちろん、頼んでいません。
なぜ「勝手に走り出す」のか
偶然ではないと思っています。理由は2つあります。
1つ目は、講義を「現場」から逆算して設計していること。
私はカリキュラムを「教えたいこと」からは組みません。
「受講生が現場で使う場面」から逆算して組みます。
修了後にどんな仕事に就き、どんな場面でAIに触れるのか。
そこから逆算すると、講義で扱う一つひとつが「自分ごと」になります。
自分ごとになった瞬間、人は指示を待たなくなります。
2つ目は、講師自身が毎日やっている姿を見せていること。
私はnoteを1,000日以上、毎日投稿し続けています。
「やれ」とは言いません。ただ、毎日やっている人間が目の前にいる。それだけです。
言葉で動かそうとすると、人は動きません。背中は、言葉より雄弁です。
念のため申し上げると、すごいのは受講生であって、私ではありません。
私がやったのは、環境を整えたことだけです。
生成AIに「正解」はない
ここからが、いちばん伝えたいことです。
生成AIは、検索とは根本的に違う道具です。
検索は「どこかにある答え」を探す行為ですが、生成AIには決まった正解がありません。
試行錯誤しながら、自分の答えを「作る」道具です。
だから、生成AIの学びで本当に身につけるべきは、操作方法ではありません。
試行錯誤する力そのものです。
宿題を出して「やらされる」経験を積ませるより、自分から試したくなる環境を作る。
そのほうが、修了後もひとりで走り続けられる人が育ちます。
研修の成果は、課題の量ではなく、環境の設計で決まる。
この考え方が、企業研修にも職業訓練にも、もっと広まってほしいと願っています。
魚ではなく、釣り方ですらなく
「魚を与えるな、釣り方を教えよ」という言葉があります。
私の講義がやっているのは、その一歩先かもしれません。
釣り方を教える前に、受講生が自分から竿を握りたくなる場を用意する。
私が渡しているのは釣り方ですらなく、「釣りたくなる海」なのだと思っています。


