タイピングが遅い人へ。練習アプリより、ブログを書きなさい

練習しようとすると、続かない。目的があると、練習は勝手に発生する。

友人がパソコンを使い始めた。ExcelもWordも、なんとか触れるようになってきた。

でも本人が一番気にしているのは、そこじゃない。

「タイピングが遅くて、話にならない」

さて、あなたならどうアドバイスするだろうか。

たぶん多くの人は、こう言う。

「タイピング練習アプリを入れて、毎日10分やりなよ」と。

まっとうだ。私も間違っているとは思わない。

でも私は、こう言う。

「タイピングの練習はしなくていい。ブログを書きなよ」

遠回りに聞こえるだろうか。実際には、こっちのほうが早い。
私は職業訓練のDX講座で6期にわたって受講生を見てきて、この結論に至った。

普通は「タイピングアプリ」を勧める。それが正解に見える

タイピングが遅い。だから、タイピングを練習する。

論理としては完璧だ。課題と対策が一直線でつながっている。

しかも今どきの練習アプリはよくできている。
無料で、ゲーム性があって、スコアが出て、苦手なキーまで教えてくれる。

だから最初の3日は、楽しい。

問題は4日目だ。開かなくなる。1週間で忘れる。
1か月後、スマホの中にアイコンだけが残っている。

思い当たる人は多いはずだ。英会話アプリも、筋トレアプリも、家計簿アプリも、だいたい同じ末路をたどる。

私自身も、いくつも墓場を作ってきた。

これを「意志が弱いから」で片づけるのは簡単だが、それは何も解決しない。
続かないのには、ちゃんと構造的な理由がある。

練習は続かない。でも「目的」があると勝手に反復が生まれる

理由はシンプルだ。

練習アプリは「手段」を練習させる。

タイピングそのものが目的になっている。打ちたい言葉があるわけじゃない。

画面に出た文字を、ただ追いかけているだけだ。
だから飽きる。当たり前だ。伝えたい相手も、伝えたい中身もないのだから。

ところが、ブログを書くとどうなるか。

まず「言いたいこと」が先にある。

今日あった出来事。
仕事で気づいたこと。
誰かに読んでほしい主張。

それを外に出すために、キーボードを叩く。

このとき、タイピングは目的から手段に降格する。

打つこと自体はどうでもよくなり、「早く書き終えて、この考えを外に出したい」という欲求だけが残る。

そして人は、目的があると勝手に反復する。

誰にも強制されず、スコアも出ないのに、毎週何千文字も打つ。
それを1年続ければ、練習アプリの100倍の量を打っていることになる。

練習しようとすると、続かない。
目的があると、練習は勝手に発生する。これが全部だ。

実際、タイピングが苦手だった受講生が3か月で見違えた

理屈の話をしても仕方がないので、実際にあったことを書く。

職業訓練の講座に、タイピングが少し苦手な受講生がいた。

キーボードを見ながら、指1本ずつ探すようにして打つ。本人も「これじゃダメですよね」と気にしていた。

私は、タイピングの練習は一度もさせなかった。

代わりに、講座の中で発信をしてもらった。
学んだこと、うまくいかなかったこと、そのとき考えていたこと。

書く場所を用意して、書く理由を渡しただけだ。

最初はそりゃあ時間がかかる。1本書くのに何時間もかけていた。

ところが、この人は途中から「投稿することそのもの」に目覚めた。
書きたいことが次々に出てくる。誰かの反応が返ってくる。それがまた次を書く理由になる。

3か月後、その人のタイピングは見違えるほど早くなっていた。

私は一度も練習させていない。書きたくて書いていたら、勝手に早くなっていた。 それだけだ。

しかも変わったのはタイピングだけじゃなかった。話す言葉に筋が通るようになった。
自分の考えを、自分の言葉で説明できるようになっていた。
当然だ。3か月間、それをやり続けたのだから。

でも、本当の問題はタイピングじゃない

ここまで書いてきて、そろそろ本題に入りたい。

タイピングが遅いことは、実は大した問題じゃない。

もっと深刻なのは、その手前にある。

今、多くの人が一日中スマホを見ている。

ニュース、SNS、ショート動画、他人の意見、他人の成功、他人の炎上。
朝から晩まで、頭の中に情報を流し込み続けている。

そして、そのほとんどがどうでもいい情報だ。

明日には忘れている。
人生に何ひとつ残らない。

にもかかわらず、頭の容量だけは確実に食われている。

一方で、多くの人が心のどこかで思っている。

「いつか自分も、何か外に出したい」と。

やりたいことがある。伝えたい経験がある。積み上げてきた仕事がある。
それなのに、一行も外に出していない。

受信ばかりで、発信の器を持っていない。

タイピングが遅いのは、その結果でしかない。原因ではなく、症状だ。

年に数回しか文章を書かないなら、遅くて当たり前だろう。
逆に言えば、発信する側に回った瞬間、速度の問題はほとんど自動的に消える。

だから私は「練習しろ」と言わない。

受信をやめて、発信に回れと言う。順番が逆なのだ。

「書けない」を先に潰す ― 生成AIの使いどころ

とはいえ、ここで必ず出てくる言い訳がある。私も現場で何百回と聞いてきた。

「文章を書くのが苦手なんです」
「書くようなネタがありません」
「自分なんかが何を書けばいいのか分からない」

正直に言う。

この3つは、今の時代、全部AIで潰せる。

自己紹介やプロフィールが書けないなら、自分の経歴を箇条書きでAIに渡せばいい。

文章の型が分からないなら、書きたいことを話し言葉のままぶつけて、整えてもらえばいい。

ネタがないなら、これまでの仕事や失敗を洗いざらい聞き出してもらえばいい。

生成AIへの指示文は、難しく考えなくていい。

あれは要するに「AIへの発注書」だ。
町工場に図面を渡すのと同じで、雑な図面なら雑なものが返ってくる。それだけの話だ。

ただし、ここを勘違いしてほしくない。

AIは「楽をするため」に使うんじゃない。「走り出すため」に使うんだ。

AIに全部書かせて、コピペして貼るなら、それはタイピングも思考も発信も何ひとつ増えない。ゼロだ。

そうじゃなくて、最初の一歩の重さをAIに下ろしてもらう。

最初の1本が出せる。反応が返ってくる。
だから2本目を書きたくなる。3本目は、AIに聞かなくても書けるようになっている。

走り出せるから、続く。続くから、タイピングも伸びる。 

これが本来の使い方だ。

石川の中小企業を回っていても、「AI導入」と称してツールだけ入れて終わっている会社は多い。

社員が誰一人として自分の言葉で何かを外に出していない。
ツールは増えたのに、発信はゼロのままだ。それは導入とは呼ばない。

技術を渡すか、動機を灯すか

昔から言われるたとえがある。

魚を与えるのではなく、釣り方を教えろ、と。

私はもう一段深いところにあると思っている。

タイピング練習アプリは、たしかに釣り方を教えてくれる。ひとつの技術を、正確に。

でもブログを書くという行為は、「釣りをしたくなる状態」そのものをつくる。

釣りたい魚が見えているから、竿の振り方は勝手にうまくなる。

誰にも言われず、朝早く起きて海に向かうようになる。技術は、動機の後ろから勝手についてくる。

私がセミナーで80回以上登壇し、職業訓練で6期にわたって受講生と向き合ってきて確信しているのは、これだ。

教えるべきは技術じゃない。灯すべきは動機だ。

技術を渡された人は、その場では上手くなる。教える人がいなくなれば、止まる。
動機に火がついた人は、こちらが何も言わなくても、勝手に前に進み続ける。

これを私は「自走」と呼んでいる。私の仕事は、教壇の上から技術を配ることじゃない。
隣に座って、その人の中にある「外に出したい何か」に火をつけることだ。伴走とは、そういう意味だ。

まとめ ― 速度は、後からついてくる

もう一度言う。

タイピングが遅いなら、練習するな。書け。

練習しようとすると続かない。目的があると、練習は勝手に発生する。

そして、本当の課題はタイピングの速度じゃない。受信ばかりで、発信していないことだ。

どうでもいい情報で頭をいっぱいにしている限り、外に出したい何かは、いつまでも中に閉じ込められたままになる。

受信をやめて、発信に回った瞬間、速度は後からついてくる。

書くことがないなら、AIに聞けばいい。
書き方が分からないなら、AIに直してもらえばいい。
最初の1本を出すハードルは、もう限界まで下がっている。

言い訳の在庫は、切れている。

私は、ツールの使い方を教える研修はやらない。

やるのは、その人が自分で走り出すまで隣にいることだ。

石川でも富山でも、地方の中小企業に足りていないのは最新のツールじゃない。

外に出したい何かを、外に出せる人だ。

まずは、あなたの1本目を書こう。一緒にやりましょう。

中小企業・自治体向け|生成AI・DX 実務ワークショップ

「使えるようになる」研修を、まず無料相談から。

「AIを導入したいが、現場が使いこなせるか不安」「号令はかけたが、現場が動かない」
そんな企業・自治体様からのご依頼が急増しています。

  • 石川労働局が視察した「石川モデル」の実践者
  • 登壇実績80回超/指導600時間+

📩 詳細・お問い合わせはこちら (無料相談)