
魚のいない池に、毎日えさを撒いていた。——それでも私は、明日も撒く。
つながり、1,000人超。
届いた営業DMは、数えきれない。
そこから仕事につながった数、ゼロ。
これは失敗談ではありません。
2024年1月1日から今日まで、1日も欠かさず続けている実験の「中間報告」です。
石川県金沢市で、地方の中小企業と一緒に汗をかいているひとりの人間が、LinkedInという世界最大のビジネスSNSに毎日投稿し続けたら、何が起きたのか。数字とロジックで、正直に書きます。
Contents
15年前、アメリカでLinkedInに出会った
私がLinkedInを初めて「現物」で見たのは、今から15年ほど前。ロサンゼルスで過ごしていた時期です。
向こうでは、LinkedInが「実名のビジネスインフラ」として、すでに当たり前に回っていました。
名刺を交換するより先に「LinkedInで見ておくよ」と言われる。
相手の職歴も、誰とつながっているかも、何を発信してきたかも、そこに全部載っている。
日本の名刺文化は、突き詰めれば「連絡先の受け渡し」です。
その役割が、アメリカではLinkedInのプロフィールに置き換わりつつありました。
紙で渡すか、実名のデータベースで見せるか。20年前の時点で、その差はすでに開いていたのです。
最近になって、日本でも「LinkedInが熱い」と言われ始めました。
でも私は、その現物を20年前に見ています。だからこそ、「知っている」で終わらせたくなかった。
知っていることと、自分の商圏で通用するかは、まったく別の話だからです。
私がいつもお伝えしている言葉に、「最終学歴より、最新学歴」というものがあります。
学び終えた過去ではなく、今この瞬間に何を学び直しているか。20年前に見た知識を棚に飾っておくのではなく、2024年の自分のフィールドで検証してみる。
それが、この実験の出発点でした。
そもそもLinkedInとは(3分でわかる基礎)
読んでくださっている方の多くは、LinkedInを使っていないはずです。まず、ごく簡単に。
LinkedIn(リンクトイン) は、2003年にアメリカで始まった、世界最大のビジネス特化型SNSです。
現在はMicrosoftの傘下で、世界の利用者は約13億人。
X(旧Twitter)やInstagramが「趣味・日常」寄りなのに対して、LinkedInは徹底して「仕事・キャリア」の場です。
最大の特徴は「実名」であること。
こちらが私のアカウント→ www.linkedin.com/in/solobizjourney
匿名でニックネームを使うSNSと違い、LinkedInは本名・顔写真・職歴・実績を看板にして、信用でつながる設計になっています。
プロフィールは、いわば「デジタル版の履歴書 兼 名刺」。
実名で経歴をさらしているからこそ、採用・営業・協業の入口として機能します。
日本への上陸は2011年。ただ、長らく伸び悩みました。終身雇用の文化や「LinkedIn=転職サイトでしょ?」というイメージが強く、なかなか根づかなかったのです。
ところが直近は様子が変わってきました。
日本の利用者は2024年時点で約400万人。それが2026年には500万人を超え、わずか1〜2年で約100万人増。
日系の大手企業も、採用や広報の目的で本格的に参入し始めています。
ただし、国内の他のSNSと比べると、まだニッチな存在です。
LINEが約1億人、XやYouTubeが約7,000万人。
それに対してLinkedInは約500万人。人口普及率で見れば、アメリカが約7割なのに対し、日本はまだ数%。「熱い」と言われつつも、母数はこの規模だという事実は、押さえておく必要があります。
実験の設計と結果 — 900日投稿して起きたこと
私がやったことは、いたってシンプルです。
- 開始日:2024年1月1日
- 内容:日々の出来事や気づきを、シンプルに投稿
- ルール:1日も欠かさず、淡々と続ける
そして今日、900日を超えました。1日も飛ばしていません。
結果を、正直な数字で並べます。
- つながり:1,000人超
- リアクション・コメント・営業DM:数えきれないほど
- 業務依頼・協業に至った件数:ゼロ
念のため補足すると、営業のDM自体はたくさん届きます。反応が「ない」わけではないのです。
ただ、そのどれ一つとして、自分の本業である「地方企業へのDX・生成AI伴走支援」の依頼にはつながらなかった。
対照的なのが、同じ内容をワンソースマルチユースで展開しているブログです。
こちらはAEO(AIによる検索・引用)経由で、実際に機関からの問い合わせが発生しました。
アクセス解析を見ると、参照元に utm_source=chatgpt.com が並んでいる。AIアシスタントが私のブログを引用し、それを読んだ担当者が問い合わせてくる、という流れが現実に起きています。
同じ人間が、同じネタを、複数のチャネルに撒いている。
それでも、チャネルごとの成果には歴然とした差が出た。
この差こそが、今回いちばん見つめたかった事実です。
なぜ仕事につながらなかったのか — これは「構造」の話
先に、はっきり言っておきます。これはLinkedInへの批判でも、つながってくださった1,000人への批判でもありません。
主語は最後まで、「私の顧客がいる場所ではなかった」という一点です。
日本のLinkedInの中心にいるのは、外資系・IT・人材・都市部のホワイトカラー層です。
転職や採用の情報感度が高く、キャリアを言語化することに慣れた人たち。
一方で、私の顧客は誰か。石川の中小企業の経営者。福祉施設の施設長。自治体や商工会の関係者。
ものづくりの現場を背負う二代目・三代目。
この人たちは、LinkedInにほぼいません。
彼らが情報を得ているのは、対面の会合であり、地元の信用金庫であり、商工会の集まりです。
つまり、私の投稿の質が低かったから反応が仕事にならなかった、のではない。
魚のいない池に、毎日えさを撒いていた。
それだけのことでした。えさの質を上げても、そもそも釣りたい魚がその池にいなければ、釣果はゼロです。
公平のために言えば、都市部のBtoB、外資系への転職、海外との取引において、LinkedInは間違いなく有効です。
今回の話は「LinkedInは無意味だ」という全否定ではありません。
「私の商圏と顧客層には、直販チャネルとして噛み合わなかった」
という、極めて限定的な報告です。
それでも私はLinkedInをやめない — 2つの理由
ここまで読むと「じゃあ、やめればいい」と思われるかもしれません。でも、続けます。理由は2つ。
理由1:信頼性のレイヤーとして機能する。
仕事を発注する前、多くの人は相手を「人物検索」します。そのとき、LinkedInのプロフィールは検索結果の上位に表示される。900日間、途切れず更新され続けているプロフィールは、たとえ投稿の中身が読まれなくても、「この人は実在し、今も活動している専門家だ」という証拠として機能します。
読まれなくても、そこに在り続けることで働く。 これは直接の反応数では測れない価値です。
理由2:顧客ではなく「紹介者・仲介者」との接点になる。
私の顧客本人はLinkedInにいません。でも、研修の仲介会社、都市部の研修エージェント、自治体案件を扱うコンサルタント——こうした「卸」の立場の人たちは、LinkedInにいます。直販の池ではないけれど、卸ルートの入口としてなら、まだ可能性がある。顧客がいない池でも、顧客を連れてきてくれる人がいるなら、話は別です。
そして何より、ワンソースマルチユースなので、維持コストがほぼゼロ。
追加の手間がかからない資産なら、無理に捨てる理由はありません。
惰性で維持できる資産は、惰性のまま持っておく。
これが、今回の棚卸しで出た結論です。
中小企業がSNSを選ぶときの、3つの問い
ここからは、読者のみなさんへの「持ち帰り」です。「うちもSNSやったほうがいい?どれ?」と迷っている経営者・広報担当の方へ。私の900日から抽出した、判断のための3つの問いを置いておきます。
問い1:あなたの顧客は、そのSNSに「いる」か?
フォロワーが増えそうか、ではありません。あなたが本当に届けたい相手が、その池で泳いでいるか。
数の多さではなく、顧客の生息地でチャネルを選ぶ。私は、ここを検証せずに撒き始めて900日使いました。あなたは、始める前に確かめられます。
問い2:問い合わせが、1件でも来たことがあるか?
すでに運用しているチャネルがあるなら、この基準で棚卸しを。1件も来ていないなら、「育てる」のか「撤退する」のかを、感情ではなく構造で判断する。反応(いいね)の数ではなく、仕事の入口になったかで見ます。
問い3:維持コストを、ゼロにできるか?
もし、他の発信の使い回しで維持コストが限りなくゼロにできるなら、「すぐ捨てる」以外の選択肢が生まれます。成果が出ていなくても、コストがかからない資産は「持っておく」判断があり得る。
撤退か継続かは、成果だけでなくコストとセットで考える。
北陸で、LinkedInを面白くしませんか
この実験は、これからも続けます。
データは今後も、良くても悪くても、正直に公開していくつもりです。
半年後には「LinkedIn実験・第2報」を書けたらと思っています。
もし、「北陸 × LinkedIn」を一緒に有効活用してみたい、そんな波長の合う方がいたら、静かに声をかけてください。
顧客がいない池だと分かったうえで、それでもこの池で何かできないかを面白がれる人と、実験を続けたい。
扉は、開けたままにしておきます。

