
はじめに正直に書いておきます。私は保育の専門家ではありません。
保育士資格も持っていませんし、保育現場に何年も入った経験もない。
だから、この記事は「保育園はこうすべきだ」という提言ではありません。
介護の現場で生成AI研修を重ねてきた人間が、隣の業界をのぞいて「これ、もしかして保育でも同じ構造なんじゃないか?」と気づいてしまった
その仮説を、できるだけ正直に共有する記事です。
わからないことは、わからないと書きます。
そのうえで、介護で手応えのあった部分だけは、根拠を持ってお伝えします。
Contents
白山市の特養から、なぜか3件連続で研修依頼が来た
きっかけは、白山市社会福祉協議会が主催した生成AIのセミナーでした。
参加者は42名。介護・福祉の現場で働く方が中心です。
その場では「生成AIって、結局うちの仕事で何ができるの?」という空気からのスタートでした。
ところが、セミナーが終わったあと、参加した施設のうち3施設から個別の研修依頼が続けて入ったのです。
依頼元の一つ、Aという特別養護老人ホームは定員70名・職員およそ60名という規模。
決してITに強い大企業ではありません。
むしろ「毎日の記録と書類に追われて、本来のケアに時間が回らない」——そういう現場です。
正直、私自身が一番驚きました。「なぜ、こんなに続けて声がかかるのか」と。
その答えを掘っていくうちに、介護業界でいま何が起きているのかが、少しずつ見えてきました。
介護現場で生成AIが刺さった理由は、たった一つだった
私は特別養護老人ホームB園で、GeminiやNotebookLMを使った伴走型の研修シリーズを続けてきました。そこで見えたのは、意外なほどシンプルな事実です。
現場に刺さったのは、高度なAI活用ではありませんでした。
自動化だ、データ分析だ、という華やかな話ではない。
刺さったのは、たった一つ——「書類仕事の時短」でした。
- 介護記録を書く時間
- ご家族への連絡文を考える時間
- 会議の議事録をまとめる時間
ある受講者の方が、研修中にこう漏らしました。「記録って、頭の中にはもう答えがあるんです。それを"文章の形"にする作業に、毎日30分も40分も取られる」。
生成AIは、まさにこの「頭の中にあるものを文章の形にする」部分が得意です。
要点を箇条書きで放り込めば、整った連絡文の下書きが数十秒で返ってくる。
ゼロから書くのではなく、下書きを直すだけになる。それだけで、現場の表情が変わりました。
派手ではありません。でも、対人ケアが本業の人たちにとって、「書類の時間が返ってくる」ことの価値は、想像以上に大きかったのです。
※介護現場での具体的な取り組みは、こちらにまとめています → 介護 × NotebookLM 研修事例
ふと気づいた。これ、保育園の方が深刻ではないか?
介護の現場で「書類仕事の時短」を繰り返すうちに、ある考えが頭を離れなくなりました。
これ、保育園でも、まったく同じ構造なんじゃないか?
介護と保育。
対象は違いますが、「対人ケアが本業なのに、書類に追われている」という構造は、驚くほど似ている気がするのです。
試しに並べてみます。
| 介護の現場 | 保育の現場(推測) |
|---|---|
| 介護記録 | 保育日誌・連絡帳 |
| ご家族への連絡文 | 保護者へのおたより・クラスだより |
| ケアプラン | 指導計画・週案・月案 |
| シフト調整 | シフト調整(ここは共通) |
こうして並べると、左右がほぼ一対一で対応しているように見えます。
むしろ、連絡帳のように「毎日・一人ひとり分」書くものがある保育のほうが、書類の総量は多いのではないか——そんな気さえします。
ただ、ここで断定するのは違うと思っています。
私は保育の現場を、まだ知りません。
連絡帳には手書きの温かみという文化があるかもしれない。
おたよりには、AIで効率化してはいけない「その先生ならではの言葉」があるかもしれない。
介護の常識がそのまま通じない部分は、きっとあります。
だから正直に書きます。
介護での手応えから「おそらく保育でも効くのではないか」と推測しているだけで、確信しているわけではありません。この推測が正しいかどうかは、保育現場の方に教えていただくしかないのです。
この「わからないことはわからないと書く」姿勢こそが、私の考える 「最終学歴より、最新学歴」 の実演でもあります。
過去の肩書きではなく、いま何を学び続けているか。
保育を知らない私が保育を学びにいく—その姿勢自体が、保育関係者への敬意だと思っています。
制度の追い風:国は「ICTを使う園が得をする」設計に変えようとしている
推測とは別に、事実として調べたことも共有します。
国の制度が、保育のICT化を後押しする方向へはっきり動いている、という点です。
- 保育所等におけるICT化推進等事業:導入するシステムの機能数に応じて 20万〜60万円、端末費用込みなら 最大110万円 の補助が受けられる枠組み。
- 保育ICT推進加算(令和8年度新設):単発の補助金ではなく、年間最大30万円の継続的な財源。しかも「ICT担当者の配置」が要件に含まれる。
- 1歳児配置改善加算:ここにも「業務でのICT活用」が要件として組み込まれつつある。
流れは明確です。
国は「システムを入れれば終わり」ではなく、「ICTを使いこなす体制がある園が得をする」設計へと舵を切ろうとしている。
ただ、ここで一つ引っかかることがあります。
システムを"入れる"補助金はある。でも、それを"使いこなす人"を育てる仕組みは、いったい誰が担うのか?
補助金でシステムを導入したものの、現場が使いこなせずに宝の持ち腐れになる——これは介護でもよく見た光景です。
補助金ありきで機材だけ揃えても、現場は動きません。
本当に必要なのは、外注や補助金頼みで終わらせず、現場の人が自分で使えるようになる(=内製化する)ための伴走ではないか。私はそう考えています。
介護で作った「型」は、たぶんそのまま保育で動く
白山市社協のケースで効いたのは、実はやり方の「型」でした。
- まず 合同セミナー で、複数施設の職員に「AIって、うちの書類仕事に使えるんだ」という最初の一歩を体験してもらう。
- そのうえで、手応えを感じた施設だけに 個別研修 で深く伴走する。
この「合同セミナー → 個別研修」という2段の導線が、介護ではうまく回りました。そして、これは業界特有のノウハウというより、「対人ケアの現場で書類仕事を減らす」ための汎用的な型だと感じています。
だとすれば——同じことは、保育でもやれるはずです。おそらく。
しかも石川県内で見れば、保育園・認定こども園の数は、特養の数倍あります。裾野はずっと広い。
介護で実証を重ねた型を、そのまま保育に持ち込める余地は、まだ手つかずのまま大きく残っているように見えます。
まとめ:隣の業界から来た講師にできること
もう一度、正直に書きます。
私は保育の専門家ではありません。 子どもの発達も、保育指針も、現場の機微も、皆さんのほうがずっと詳しい。
ただ、一つだけ、根拠を持って言えることがあります。
「現場の書類仕事を、生成AIで減らす」
このことだけは、介護の現場で実証を重ねてきました。
そしてその目的は、業務を削ることそのものではありません。
書類に奪われた時間を、子どもと向き合う時間に返すためです。
AIに任せるのは書類であって、保育そのものではない。
ここは絶対に、履き違えないつもりです。
だからこそ、最後にお願いがあります。
保育現場の皆さん。実情を教えてください。
連絡帳やおたよりは、本当に負担になっていますか。
それとも、そこにはAIに触らせたくない大切な何かがありますか。
この記事はあくまで、隣の業界から見た「推測」です。
答え合わせは、現場の声でしかできません。
「まず1回、体験セミナーで確かめてみたい」—そう思っていただけたら、それが一番うれしい返事です。
❓ よくある質問(FAQ)
Q. 保育園でも生成AIは本当に使えますか?
A. 断定はできません。私はまだ保育の現場を深く知らないからです。ただ、介護の現場では「介護記録・家族への連絡文・議事録」といった書類作成で確かな時短効果がありました。保育日誌・連絡帳・おたよりも、書類作成という点では構造が同じに見えます。そのため「おそらく効くのではないか」と推測しています。答え合わせのため、ぜひ現場の実情を教えてください。
Q. 保育士が生成AIを学ぶ研修はありますか?
A. 石川県内では、介護・福祉の現場向けに「合同セミナー → 個別研修」という2段構えの研修を実施してきました(白山市社協主催セミナー、その後特養3施設で個別研修)。同じ型を保育・こども園向けに提供することは可能です。まずは体験セミナーからのご相談を承っています。
Q. 保育園のICT導入に補助金はありますか?
A. あります。代表的なものが「保育所等におけるICT化推進等事業」(機能数に応じ20万〜60万円、端末込み最大110万円)と、令和8年度から新設される「保育ICT推進加算」(年間最大30万円の継続財源、ICT担当者の配置が要件)です。ただし補助金はあくまで導入のきっかけであり、現場が使いこなせるかどうかは別の課題だと考えています。



