石川の介護施設が始めるDX|ノーコードAppSheetで介護記録・申し送りを効率化する

※この記事は、私が現場でよく耳にする介護職の声を、ひとつの物語(モデルケース)としてまとめたものです。登場する川端さん・佐藤さんは特定の個人ではありません。

【デイサービスの玄関先で】

夕方、利用者さんを送り出したあとのデイサービスの玄関先。
介護主任の川端美和さん(仮名・50代)は、ケアマネ仲間の集まりで久しぶりに会った佐藤さんにこぼしていました。佐藤さんは介護とは畑違いの、建設業の現場監督です。

川端さん「うちな、まだ記録ぜんぶ手書きなんよ。それを夜にパソコンに打ち直してさ……毎日それで残業やわ」

佐藤さん「えっ、二回書いとるの? うちの現場、それスマホで終わらせとるよ」

川端さ「スマホ? そんなシステム、なんぼするん。うちみたいな小さいとこ、よう入れんわ」

佐藤さん「いや、買うたんじゃない。自分で作ったんよ。 Google AppSheetっていうて、ほぼ金もかからんし」

川端さん「……自分で、作る?」

「高いシステムを買う」でも「ITに詳しい人を雇う」でもない。
自分で、ほとんどお金をかけずに、記録アプリを作る。 
この一言が、川端さんの手を止めました。

この記事は、そんな川端さんが「記録のための残業」を卒業するまでの物語です。

① なぜ介護現場は「記録」でこんなに疲弊するのか

介護の仕事なのに、いちばん時間を奪っているのが「介護そのもの」ではなく「記録」——。
これは多くの現場で起きている、静かな本末転倒です。

手書き → PCへの「二重入力」

日中はバタバタで、まずは紙にメモ。夜、それを事業所のパソコンに改めて打ち込む。
同じことを二回書いているわけです。川端さんの残業の正体は、この「転記の時間」でした。

申し送りノートの転記と、伝わらないリスク

申し送りノートに書く → 次の人が読む → でも忙しくて読み飛ばす。
紙の申し送りは「書いた」と「伝わった」の間に、深い谷があります。

申し送り漏れへの、消えない恐怖(場面2)

川端さん(夜、誰もいない事務所で)

「あの方の薬、今日から変わったって……ちゃんと申し送りノートに書いたけど、明日の早番、気づいてくれるやろか。読み飛ばされたら……」

ベテランほど、この「もし伝わっていなかったら」という不安を抱えたまま家に帰ります。
記録は、事故を防ぐための命綱。だからこそ、漏れが怖い。

記録のために、介護の時間が削られる

利用者さんと向き合う時間を増やしたくて始めた仕事なのに、書類に追われて、その時間が削られていく。この矛盾こそが、現場がいちばんしんどい部分です。

介護現場を疲弊させる3つの「記録」

1
二重入力
紙に書く → 夜にパソコンへ打ち直し
2
転記と漏れ
申し送りノート → 読み飛ばしの不安
3
本末転倒
記録に追われ、利用者を見る時間が減る

② Google AppSheetとは?なぜ介護現場に向くのか

Google AppSheetとは、プログラミングなしで、スマホで使える業務アプリを自分で作れるGoogleのサービスです。 

スプレッドシート(表計算)の知識があれば、記録・申し送り・チェック表などを、その場でアプリにできます。

なぜこれが介護現場に向いているのか。理由は3つです。

プログラミング不要=専任のICT担当がいなくても作れる

コードを書く必要がありません。「この項目を記録したい」を表にまとめるだけ。
専門のシステム担当を置けない小さな事業所でも、現場の職員が自分で作れるのが最大の強みです。

スマホ入力=その場で記録、ベテランもパートさんも「押すだけ」

ケアの合間に、スマホでポンと入力。あとから事務所のパソコンに座り直す必要がありません。
入力画面は「ボタンを押す」「選ぶ」中心に作れるので、ITが苦手な職員でも、操作は数えるほどで済みます。

料金=高額システムとの対比(最新・要点)

  • 無料お試し枠:少人数(テスト用に最大10人程度)で、まず試せます。
  • 有料でもStarter 1人 月$5〜/Core 月$10〜(2026年時点)。
  • そして見逃せないのが、お使いのGoogle Workspaceのプランによっては、追加料金なしでAppSheet Coreが含まれていること。すでにGoogleを使っている事業所なら、追加コスト0円で始められる可能性があります。

数十万円〜の専用記録システムと比べると、桁が違います。
しかも「自社で作って、自社で育てる」ので、外注に毎月払い続ける構造になりません。 
これは「補助金が出るうちだけ」ではなく、自分たちで使い続けられるという意味で、現場にとって本当の意味で安心できる形です。

※料金体系は変わることがあります。導入前に必ず公式の最新情報をご確認ください。

③【物語】川端さんが申し送りアプリを作るまで

ここが、この記事のいちばん大事なところです。

ビフォー|二重入力・残業・申し送りへの恐怖

川端さんの毎日は、こうでした。日中は紙にメモ、夜にパソコンへ転記、申し送りノートに書いて「伝わったかな」と不安を抱えて帰宅。記録のための残業が、当たり前になっていました。

きっかけ|佐藤さんの紹介から、手を動かすセミナーへ

建設業の佐藤さんは、もともと個人でAppSheetのセミナーに参加し、そこで覚えたことを自分の現場に持ち帰った人でした。

佐藤さん「最初から完璧なもん作ろうと思わんでええんよ。おれも『現場の写真と報告』のアプリ一個から始めたし。川端さんとこなら、まず申し送り一個でええんちゃう?」

川端さん「申し送り、一個だけ……それなら、できそうな気がする」

川端さんは、ゼロからアプリを作るハンズオンのセミナーに、自分で申し込みました。 
講義を聞くだけでなく、その場で手を動かして「申し送りアプリ」を一つ、形にして持ち帰ったのです。

アフター|申し送りがリアルタイムで共有される

  • 日中、ケアの合間にスマホで申し送りを入力 → その瞬間に、全員のスマホで見られる
  • 「読み飛ばし」の不安が減り、薬の変更も体調の変化も、リアルタイムで共有。
  • 夜の「転記のためだけの残業」が、ぐっと減った。
  • そして何より——利用者さんの顔を見る時間が、少し戻ってきた。

川端さん「あれだけ怖かった申し送り漏れの不安が、軽くなったんよ。何より、夜に一人でパソコンに向かう時間が減って、利用者さんと話す余裕ができたんが、いちばん嬉しいわ」

川端さんのビフォー・アフター

Before(手書き+転記) After(AppSheet)
記録の手間 紙→夜にPCへ二重入力 その場でスマホ入力(1回)
申し送り ノート、読み飛ばし不安 入力した瞬間に全員共有
残業 記録のための残業が常態 転記の残業がぐっと減る
気持ち 漏れへの恐怖が消えない 不安が軽くなり、余裕が戻る

申し送りの「不安」感情曲線

安心 不安 谷:「伝わってないかも」 導入セミナー 共有で安心 手書き時代 きっかけ アプリ運用後

④ 介護・福祉でAppSheetを使う5つの場面

申し送り以外にも、現場の「紙とExcel」は、たいていアプリにできます。

  1. 介護記録/申し送り……日々の記録をその場でスマホ入力・共有。
  2. バイタル/服薬チェック……体温・血圧・服薬の有無を選ぶだけで記録。
  3. ヒヤリハット報告……気づいたその場で写真つき報告、抱え込みを防ぐ。
  4. 送迎/出欠管理……誰がどの便か、当日の出欠を一覧で確認。
  5. 備品/在庫管理……おむつ・消耗品の残量を記録し、発注漏れを防ぐ。

ポイントは、全部を一気にやろうとしないこと。 
どれか一つ、いちばん困っている業務から始めるのが、続けるコツです。

⑤ 一番大事な注意点:個人情報とアクセス権限

ここは、売り込みではなく正直にお伝えしたい、いちばん大事な話です。

介護記録は、健康状態という「要配慮個人情報」を扱います。便利だからと、いきなり機微な情報を全部アプリに載せるのは危険です。最初に必ず決めてほしいのが、「誰が、どこまで見られるか」——アクセス権限の設計です。

  • 管理者・常勤・パート・外部……立場ごとに見える範囲を分ける
  • 簡易な構成のまま、いきなり機微な健康情報を載せない。
  • 個人のプライベート端末で扱う場合のルールを、事業所として先に決める。

「便利なアプリができた」より先に、「この情報を、誰の責任で、どこまで扱うか」を決める。
ここを最初に設計できるかどうかが、福祉法人として安心してDXを進められるかの分かれ道です。
研修でも、私はこの権限設計を最初にお伝えしています。

⑥ 何から始める?「申し送り」か「ヒヤリハット」1個から

全記録の一斉移行は、目指さないでください。
現場が混乱して、結局「前の紙のほうが楽だった」に戻ります。

おすすめは、いちばん困っている業務を、たった1個だけアプリにすること。 
多くの現場では「申し送り」か「ヒヤリハット報告」のどちらかです。
一つ動いて「これ、楽になったね」が現場に広がってから、次へ。
小さく始めて、使い続ける。 これが、私がずっと大事にしている考え方です。

進め方は、大きく2つ。

  • 自分で試す……無料枠でまず触ってみる。
  • ハンズオンで体験する……手を動かして、申し送りアプリを一つ作って持ち帰る。

⑦ 手を動かして体験する(ご案内)

「読んで分かった」と「自分で作れた」の間には、大きな差があります。
いちばんの近道は、一度その場で作ってみることです。

▼ AppSheetハンズオンセミナー(個人参加)
実際にアプリをゼロから作成する、手を動かす講座です。

  • 日時:6月25日
  • 会場:近江町交流プラザ(金沢)
  • 参加費:¥5,000
  • 👉 実際に介護記録アプリを作るハンズオンはこちら ▶ /dx-seminar/appsheet/

物語の佐藤さんと同じで、まず個人で参加して、覚えたことを職場に持ち帰る
これが、現場に根づく一番自然な形です。

▼ 施設まるごと学ばせたい、管理者・理事の方へ
「現場全体で、無理なく使い続けられる形にしたい」——そんな福祉法人さまには、施設単位での法人研修をご用意しています。権限設計など"つまずきやすい所"も含めて伴走します。
👉 管理者・理事の方へ ▶ /dx-kenshu/

▶ 他業種の事例: [建設業の佐藤さんの場合(AppSheet活用記事)]

【まとめ】

  • 介護現場の残業の正体は、しばしば「介護」ではなく「記録の二重入力と転記」です。
  • Google AppSheetなら、高いシステムを買わず、ITが苦手でも、自分で記録・申し送りアプリを作れます(Workspace次第で追加0円も)。
  • コツはただ一つ。全部やろうとせず、申し送り1個から、小さく始めて使い続けること。

よくある質問(FAQ)

Q1. 介護記録をアプリ化するメリットは?
A. 紙とパソコンへの二重入力がなくなり、その場でスマホ入力できます。申し送りがリアルタイムで共有されるため、読み飛ばしや伝達漏れの不安が減り、記録のための残業も削減できます。

Q2. 高い介護システムを入れなくても、記録はデジタル化できる?
A. できます。Google AppSheetは無料で試せる枠があり、有料でも1人 月$5〜。お使いのGoogle Workspaceのプランによっては、追加料金なしでAppSheet Coreが含まれることもあります。

Q3. ITが苦手な職員でも使える?
A. 入力画面は「選ぶ・押す」中心に作れるので、操作は数えるほどです。作る側もプログラミング不要で、現場の職員が自分で作れます。

Q4. 個人情報(健康情報)を扱っても大丈夫?
A. 扱えますが、最初にアクセス権限の設計が必須です。「誰がどこまで見られるか」を立場ごとに分け、簡易な構成のまま機微な情報を載せないこと。ここを最初に決めるのが、安全なDXの大前提です。

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