石川県 能登に生成AIを根づかせる。1人の軍師か3人の伝道師か

「領土を守る」のをやめた。能登に"使い手"を増やすと決めた。

自分の「陣地」を手放すと決めた

私はこの2年、生成AIやDXの講師をしてきました。

正直に書きます。私はどこかで、この領域を「自分の陣地」「自分だけの領土」だと思っていました。

誰よりも現場を踏み、誰よりも泥臭く失敗してきた。
その自負が、いつのまにか「これは自分の城だ」という発想に変わっていたのです。

ですが、ある時はっきり気づきました。城を守っているうちは、何も広がらない。

特に、能登です。震災と豪雨を経て、いま能登に必要なのは「立派な講師が一人いること」ではありません。

現場で、繰り返し、生成AIを"使い続ける人"が、地域の中に何人いるかです。

そこからの半年、私はずっと一つの問いを考え続けてきました。

1年後の能登に生成AIを根づかせるとき、私が一人で突っ込むのと、3人を講師に育てて面で攻めるのと、どちらが正解か。

今日は、その結論を書きます。

先に結論を言う

1年後の能登を前提にすると、こうです。

  • 私一人で進める方式は、「初速・品質・信頼性」で強い。
  • 3名を育てて進める方式は、「到達範囲・継続性・災害時の耐障害性」で強い。

そして最終的な総合点は、能登のような被災地においては「3名育成型」のほうが高い、というのが私の答えです。

理由を、現場の言葉で順に説明します。

前提 ― 能登は「単発の講演」では動かない

石川県の中小企業は、そもそも生成AIの「活用方針」が決まっていない会社が大半です。
ツールを入れることより、現場で実際に使われ続ける状態をどう作るかのほうが、はるかに難しい。

そのうえで能登は、復旧・復興・生活再建が同時に進行している地域です。
仕事づくり、人材育成、地域の中で自分たちで実装できる力 ― この三つが、他のどの地域よりも切実に求められています。

ここで効くのは、一度きりの華やかな講演ではありません。

何度も顔を出し、隣に座って一緒に手を動かす「伴走」です。

これが、今回の話の大前提になります。

数字で並べてみる(※実測ではなく実務レンジ)

下の表は、「1年後の能登で生成AI活用を広げる」ことを目的に置いたときの、現実的な見立てです。

厳密な実測値ではなく、研修の定着率、中小企業の導入実態、被災地特有の人的制約を踏まえた実務的なレンジだと受け取ってください。

観点私一人私+3名
月あたり実施回数4〜8回12〜24回
触れられる参加者数40〜120人/年120〜360人/年
個別フォロー可能人数20〜40人/年60〜150人/年
地域内の継続拠点数1〜2拠点3〜6拠点
1年後の定着率30〜50%45〜70%
私の稼働集中度高い中程度
災害・欠員時の継続性低い高い

数字を眺めると、ある事実がはっきりします。

初速と品質は一人が強い。だが「広がり」と「止まらなさ」は、明らかに複数人が強い。

1人運営の強み ― 点で深く刺す

私一人で進める最大の武器は、メッセージの一貫性品質の高さです。

私の強みは「現場の課題」と「新しい技術」を組み合わせるところにあります。

決まった講義を再現することより、その会社・その地域の文脈に合わせて、深く刺す。
これは一人でやるからこそブレません。

しかも被災地では、「誰が来るか」が信頼に直結します。
立ち上げの段階では、私自身がその場に立つこと自体が、強い信用資産になります。
ここは間違いなく一人の強さです。

ただし、弱点も明確です。移動も、準備も、個別相談も、継続伴走も、事例づくりも、発信も ― 全部が私一人に集中する。

能登のように復旧と生活再建が同時に走る地域で、単発で終わらせず「繰り返し伴走する」となれば、一人ではどこかで必ず息切れします。

点は深いが、面に広がらない。これが一人運営の限界です。

3名育成の強み ― 面で根づかせる

3名を講師に育てると、到達範囲が一気に広がります。

たとえば珠洲・輪島・七尾と、それぞれが地域を分担できれば、同じ1年でも接点の数はまるで変わります。

中小企業の多くが活用方針すら決まっていない以上、現場に近い人が、何度も、しつこく関わる体制こそが定着に効く。これは理屈ではなく現場の実感です。

もう一つ、被災地で決定的に重要なのが冗長性(止まらない仕組み)です。

道路事情、体調、家族の事情、稼働の波 ― 何が起きても、3人いれば活動が止まりにくい。
一人なら、私が倒れた瞬間にすべて止まります。能登でそれは、致命的です。

研修を「やりっぱなし」にせず、相談会・共有の場・実践のループで回し続ける。
それを成立させるには、やはり複数人の分担が圧倒的に有利なのです。

点で強いか、面で強いか

質の面で見ると、構造はこうです。

  • 私一人のモデルは「深い変革型」。 受講者は「本物から学んだ」という納得感を持ちやすく、最初の火付け役として非常に強い。
  • 3名モデルは「面展開型」。 一人ひとりの深さはやや薄まるかもしれない。だが地域の中に複数の「使い手であり、伝え手でもある人」を作れるため、文化として根づきやすい。

つまり ― 私一人は「点で強い」、3名は「面で強い」。

能登の復興局面では、点の強さだけでは広がりが遅く、面の強さだけでは初期の品質がぶれる。
だとすれば最適解は一つしかありません。

私が初期設計と"難所対応"を担い、3名には標準化された実践講座と伴走を任せる ― ハイブリッドです。


1年後の能登で勝つための布陣

1年後、能登で本当に成果を出したいなら、追うべき指標は「受講者数」ではありません。

使い続ける"小さな拠点"を、いくつ作れたか。

これです。派手な動員数ではなく、地域に残り、回り続ける拠点の数。

そのためには、私が講師として前面に立ちながら、3名に明確な役割を持たせる。

  • 地域担当(珠洲・輪島・七尾を分ける)
  • 業種担当(その産業の言葉で話せる人)
  • 継続支援担当(伴走と相談を回す人)

被災地では、知識が正しいかどうか以上に、「いつでも相談できる相手が、近くに居続けること」が成果を左右します。だからこそ、人を増やすのです。

実務的な結論

整理します。

  • 短期の立ち上げは、私一人が有利。 初速・品質・信頼で勝てる。
  • 1年後の広がりと定着は、3名体制が有利。 面で根づく。
  • 能登のような被災地では、最終的に「3名育成型」のほうが総合点が高い。

私はこの2年、生成AIを「自分の領土」だと思っていました。

でも能登に本気で根づかせるなら、答えは逆でした。自分の陣地を手放し、使い手を増やすこと。

それが、地域に残る唯一のやり方だと、いま確信しています。

「戻す」のではなく「飛ばす」。復旧ではなく、生成AIで能登に新しい仕事の形を作る。
その第一歩が、この布陣です。

次は、この「1人運営」と「3名育成」を、人数・回数・定着率・売上・地域貢献を並べたKPI設計表まで落とし込み、実行計画にしていきます。

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