
誰にも教わらなかった。だから、あなたにもできると言い切れる。
なぜ今、この話を書くのか
「DXって何から始めればいいかわかりません」
石川県内の経営者さんや、職業訓練の受講生さんから、この言葉を何度聞いたかわかりません。
正直に言います。私はこの言葉が、ずっと理解できませんでした。
冷たく聞こえるかもしれません。でも、理解できない理由がちゃんとあります。
私自身が、誰かに教わってここまで来たわけじゃないからです。
今日は、「DX・生成AI活用の専門家」なんて肩書きの裏側にある、お世辞にもカッコいいとは言えない20年のIT遍歴を、赤裸々に書きます。
これを読んで、「こんなやつでもできたなら、自分にもできるかもしれない」と思ってもらえたら、それだけで十分です。
Contents
名前も名乗れなかった新卒時代
大学を卒業して、最初に入ったのはソフトハウスと呼ばれる小さなIT企業でした。
入社してすぐ、出向に出されました。NTTドコモ関連のシステム開発の現場です。
自分が何次受けだったのか、今でもわかりません。わかっていたのは一つだけ。
「自分の会社の名前は言わないように」
そう言われていました。
やることもありませんでした。
「座っていてくれればいいから。マニュアルとかテキスト読んで勉強しておいて」。
これが私の社会人としてのスタートです。
華やかでもなんでもない。
むしろ、自分が何のためにそこにいるのかすらわかっていなかった。
サンシャイン60で燃え尽きた
次に移った現場は、池袋のサンシャイン60。
カード会社が主催するオンラインオークションサイトの開発でした。
ここで初めて、コーディングらしいことをやりました。C++でデータベースに接続して、結果を画面に表示するようなプログラム。
断片的にしか覚えていませんが、「自分の書いたコードが動いた」という感覚は新鮮でした。
ただ、代償がありました。
残業が月200時間。
毎日終電。休日出勤。体力も気力も、じわじわ削られていきました。
そして、燃え尽きました。文字通り。
金沢に帰ろう。それだけを考えていました。
「静かな退職」、そして入院
金沢に戻ってからは、ERPパッケージをカスタマイズする会社に入りました。
何をやっていたか、正直ほとんど覚えていません。それくらい、やる気がなかった。
今でいう「静かな退職」ですね。いや、それより酷かったかもしれません。
体はそこにあるけれど、心はどこにもない。
そしてある日、精神疾患で入院することになりました。
入院して初めて、周りの人たちにどれだけ迷惑をかけていたかに気づきました。
家族にも、同僚にも。自分のことしか見えていなかった。
ここが底でした。
29歳、バンクーバーへ—嘘から始まったターニングポイント
退院後、29歳でカナダのバンクーバーに渡りました。ワーキングホリデーです。
見つけた仕事は、日系の保険会社のウェブサイト作成。
ここで一つ、白状します。
やったことがないのに、「やったことがあります」という顔で入りました。
当然、しんどかったです。何もわからない。
HTMLって何?CSSって何?というレベルです。
でも、ここが私の人生のターニングポイントになりました。
「入ってから覚えればいいじゃないか」
開き直りと言われればそれまでです。
でも、毎晩アパートに帰ってから、他のウェブサイトのソースコードを見ながらHTMLとCSSを覚えました。SEO(検索エンジン対策)も独学で覚えました。
当時はGoogleの有料広告なんてまだなくて、月に一回のデータセンター更新—通称「Google Dance」—で検索順位がガラッと変わるのを、毎月ドキドキしながら眺めていました。
この経験が、自分の中の何かを決定的に変えました。
「自分で調べれば、なんでもできる」
大げさじゃなく、本気でそう思えるようになった。
海を渡り続けた10年——全部、独学
バンクーバーの前後で、日本からリサイクル品を海外に売る会社でも数年働きました。
ゲームの買い取りサイトを、プログラムでちょろっと作ったこともあります。
経営者の友人のウェブサイトを改修したら、偶然アクセスが増えて売れるようになった。
「ありがとう」と喜ばれたのは、今でもいい思い出です。
37歳でアメリカのロサンゼルスに渡り、オンラインショップのマネージャーをやっていました。
サイトのちょっとした改修は外注に出していましたが、「ここをこう変えたらもっと売れる」という勘は、独学で培ったものでした。
日本に戻ってからは、昼間の仕事をしながら夜中3時に起きてAmazonのせどりをやっていた時期もあります。中途半端に終わりましたが、「ネットでモノを売る」感覚は体に染みつきました。
その後、温泉旅館のオンラインショップの売上改善に関わり、カラーミーショップやLooker Studio(データ分析ツール)を初めて触りました。
並行して、山中漆器をShopifyで海外向けに販売。たまに数万円の高額な商品が売れたときは、素直に嬉しかった。
全部つながっている
C++、HTML、CSS、SEO、EC運営、データ分析、Shopify——。
振り返ると、一つひとつはバラバラに見えるかもしれません。でも、全部つながっています。
そして、ここまでの流れが、今の仕事——石川県商工会連合会やISICOでのセミナー講師、職業訓練DX講座の講師(来月から6期目)、セミナー登壇80回以上——に、そのままつながっています。
ポイントは一つだけです。
誰かに教わって動いてきたわけじゃない。
ITスクールに通ったこともなければ、メンターがいたわけでもない。
IT系の資格も持っていません。全部、必要に迫られて、自分で調べて、やってみて、失敗して、また調べて。その繰り返しです。
「やり方がわかりません」への本音
だから冒頭の話に戻ります。
「やり方がわかりません」が、私にはどうしても理解できない。
わからなくて当然です。最初は誰でもわからない。
私だってバンクーバーで「HTML?何それ?」という状態からスタートしています。
でも、今あなたの手元にはスマートフォンがあって、検索すれば大抵のことは出てきます。
YouTubeを開けば動画で手順を見せてくれる人もいる。
ChatGPTに聞けば、専門用語を噛み砕いて説明してくれる。
私が29歳で独学を始めた2000年代より、今のほうが圧倒的に環境がいい。
「やり方がわからない」のではなく、「やるかどうか決めていない」だけじゃないでしょうか。
石川県で商売をやっている経営者さん。
人手不足で困っている、採用しても続かない、デジタル化しなきゃいけないのはわかってるけど何から手をつければ。
その気持ちはわかります。でも、精神疾患で入院して、海外に逃げて、嘘をついて仕事をもらって、毎晩HTMLを写経していたような人間でも、なんとかなっています。
あなたにできないわけがない。
必要なのは才能じゃありません。スクールでも資格でもない。
「とりあえず調べてみるか」という、たった一歩の気力だけです。
おわりに
まだ書ききれていないエピソードは山ほどあります。
でも、今日伝えたかったのはこれだけです。
独学で、全然事足りる。
もし「何から始めればいいかわからない」と本気で悩んでいるなら、まずは検索してみてください。
それでもわからなければ、相談してください。
自分で調べて、自分で動いて、自分で回せるようになる。そこまでの伴走は、喜んでやります。
でも、最初の一歩だけは、あなた自身で踏み出してください。

