
「画面の向こう」に仲間はいない。「隣の席」にしか、学びの連鎖は生まれない。
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「石原さん、オンライン研修に焦りませんか?」
先日、ある方にこう聞かれました。
生成AIやDXのオンライン研修、確かに増えましたよね。大手の研修会社がどんどん参入して、全国どこからでも受けられる講座が山ほどある。
「焦りませんか?」
正直に言います。全く考えていませんでした。
だって、土俵が全く違うんです。
オンラインで「この講師はすごい」と思わせるのは至難の業
オンライン研修の講師は大変だと思います。本当に。
画面を通して、受講生の心をつかむ。これ、ちょっと想像してみてください。
カメラの向こうにいる相手の表情は小さなサムネイル。
ミュートになっている人が半分。質問を投げても沈黙が返ってくる。
その状況で「この人の話、もっと聞きたい」と思わせるのは、もう神の領域です。
私は対面でやっています。だから身振りも手振りも使える。
受講生の目を見て、理解が追いついていないなと思ったら立ち止まれる。
ちょっと脱線して、笑いが起きて、場の空気が変わる。
しゃべり方の強弱で「ここ大事ですよ」と伝えられる。
でも、これは私の「圧倒的な優位性」ではありません。
本当の優位性は、もっと単純なところにあります。
答えは単純。「隣に受講生がいるかどうか」
私が対面セミナー登壇80回以上、職業訓練DX講座600時間の現場で確信していること。
それは――
受講生の隣に、受講生がいるかどうか。
教え合いができるかどうか。これがすべてです。
オンライン研修で、受講生同士が「ちょっとここ教えて」とささやき合う場面、ありますか?
画面越しに「私、こうやったらうまくいきましたよ」と自然に声をかけ合う。想像つきますか?
私には想像がつきません。
3回連続で来る人たちの間に起きること
私の対面セミナーには、3回連続で参加してくださる方がたくさんいます。
1回目は「生成AIって何ができるの?」という好奇心で来る。
2回目は「前回やったこと、もう少し深掘りしたい」と戻ってくる。
3回目になると、もう講師の話より隣の受講生との会話のほうが盛り上がっている。
「うちの会社ではこう使ってるんですよ」
「え、そんなやり方があるんですか?」
「今度うちにも教えに来てくださいよ」
こういう情報交換が、セミナー中に自然と始まるんです。
職業訓練DX講座では、もっと長い時間を一緒に過ごします。すると「教え合い」が「助け合い」に変わる。複数人で同じゴールに向かっているから、誰かがつまずいたら隣の人が手を差し伸べる。
オンライン講義でありがちな「途中で投げ出す」も、隣に仲間がいれば起きにくい。
これは講師の腕の問題じゃないんです。「場の構造」の問題です。
講師が事例を紹介するのではない。受講生が自分の話を始める
ここで一つ、誤解されやすいことがあります。
「対面セミナーだと、講師が良い事例をたくさん紹介してくれるから学びが深い」
違うんです。私が事例を話すんじゃない。
受講生同士が、自分の業務の話を始めるんです。
たとえばこういう場面が、ワークショップ中に自然と起きます。
生成AIで文章作成の演習をしているとき。
ある介護施設の職員の方が、隣の席の方に画面を見せながらこう言いました。
「これ、うちのケアプランの文書作成に使えませんかね? 毎月同じような文書を手作業で書いてて、残業の原因になってるんですよ」
すると隣の方が覗き込んで、
「あ、うちも似たようなのあります。報告書のフォーマットが決まってるのに、毎回ゼロから書いてて。これ、テンプレートを覚えさせたらいけそうですよね?」
後ろの席から別の方が身を乗り出してくる。
「それ、うちの請求書の明細チェックでもいけるかも……」
私はこのとき、何もしていません。ただ演習の時間を取っただけです。
でも受講生たちは、自分の隣にいる「同じ地域で、同じような業務課題を抱えている人」の言葉に反応して、自分の業務に置き換えて考え始めている。
これは講師がどれだけ素晴らしい事例スライドを用意しても、起きない現象です。
なぜか。
講師の事例は「他人の話」です。隣の席の人の話は「自分の話」になるからです。
「あの大企業がAIで年間何千時間削減しました」と聞いても、「うちには関係ないな」で終わる。でも、隣に座っている同じ規模の事業所の人が「うちのあの業務、これでいけそう」とつぶやいた瞬間、「じゃあ、うちも……」と火がつく。
しかもこの会話は、セミナーが終わった後の名刺交換でも続きます。
「さっきのあれ、もう少し詳しく教えてもらえませんか?」と。
オンラインで、この空気が生まれるでしょうか。
同じ会社でも「隣の部署」は異国である
「うちは一社単独で研修をお願いしたいんですが、それでも効果はありますか?」
こう聞かれることがあります。
答えは、むしろ逆です。同じ企業でも、部署や事業所が違えば「隣は異国」です。
総務がやっている業務を、営業は知らない。製造現場の悩みを、経理は聞いたことがない。
本社のやり方を、支店は見たことがない。
同じ会社に何年もいるのに、隣の部署が毎日どんな作業に時間を取られているか、誰も知らない。
これが普通です。
ところが対面ワークショップで一つのテーブルを囲むと、この壁が一瞬で崩れます。
生成AIでメール文案を作る演習をしていたとき。営業部の方が「これ、お客様への提案書の叩き台にも使えるな」とつぶやいた。
すると同じテーブルにいた総務の方が、「え、提案書って毎回ゼロから書いてるんですか?うちの部署では報告書のテンプレートをAIに作らせたら、かなり楽になったんですけど」と返した。
営業の方の目が変わりました。「それ、どうやったんですか?」
この瞬間に起きていることの意味、わかりますか?
普段の業務では絶対に交わらない部署同士が、「生成AI」という共通の体験を通じて、お互いの知恵を交換し始めている。
講師が「他部署連携が大事です」とスライドで説いても、こうはなりません。
同じテーブルで同じ課題に取り組み、隣の人の画面が見える距離にいるから起きるんです。
しかもこれは研修の場だけで終わらない。
部署に戻った後に「この前のワークショップで総務の人に教えてもらったんだけど」と社内で広がっていく。一回のワークショップが、部署を越えた情報共有のきっかけになる。
外部研修会社のオンライン講座で、自社の部署間連携が生まれるでしょうか。
私には、その絵が浮かびません。
白山市、50名。いたるところで感想の共有が生まれた
先日、白山市で社会福祉関連団体の方々を対象に、50名規模のワークショップを開催しました。
正直、最初は「この人数で対面ハンズオンが成り立つだろうか」という不安もありました。
結果は、壮観でした。
サポートスタッフを配置して、実際に手を動かしてもらう。
すると50名の会場のいたるところで、小さな歓声が上がる。
「できた!」「見て見て、こうなった!」という声。
隣同士で画面を見せ合い、感想を共有し合う光景が、部屋中に広がっていました。
これはオンラインでは絶対に起きない現象です。
最近、小規模ワークショップのつもりで始めた講座の参加人数が増えてきています。
それでもサポーターを入れながら、一人ひとりが手を動かすハンズオン形式は崩しません。
なぜなら、「手を動かす」と「隣の人と共有する」がセットになって初めて、学びが定着するからです。
「言ってもいいんですか?」と思われるかもしれませんが
この話は、私がやっていることの本当に大事な部分です。
ノウハウを公開して大丈夫なのか? 真似されたら困るんじゃないか?
そう思われるかもしれません。
でも、私はこの手法を広めてほしいんです。
石川県内で、対面ハンズオンで生成AIを教えられる人はまだまだ少ない。
オンライン研修を受けて「なんとなくわかった気がする」で終わっている企業が、たくさんあります。
経営者のみなさん。
社員に生成AI研修を受けさせるとき、「安いから」「手軽だから」でオンラインを選んでいませんか?
それで現場は変わりましたか?
研修の目的は「受けさせた」ことではなく、「現場で使えるようになった」ことのはずです。
隣に仲間がいる環境で、実際に手を動かして、つまずいたら助けてもらえる。
その場で「うちの業務ならこう使える」と気づける。
それが対面ワークショップの価値です。
石川県を、全国一の生成AI立国に
私の目標は、石川県を全国一の「生成AIが当たり前に使われている県」にすることです。
そのためには、私一人が80回セミナーをやるだけでは足りない。
この「対面ハンズオン+教え合い」という手法を実践できる人が、石川県内にもっと増えなければいけない。
だから隠しません。むしろ広めたい。
画面の向こう側ではなく、隣の席に座っている人と一緒に学ぶ。
それが、地方から生成AIで勝つための、最もシンプルで最も強い方法だと信じています。
一緒に、石川県の現場を変えていきましょう。

