Gemini×NotebookLMの連続研修で介護記録が激変──石川県の特養が実証した導入フロー

1回のセミナーで現場は変わらない。でも、2回目で空気が変わった。

社会福祉からのAI研修依頼が、止まらない

最近、社会福祉関連の事業者様からのセミナーや相談のご依頼が急増している。

1週間に2件のご依頼が入ることも珍しくない。

正直に言えば、最初は驚いた。「介護の現場にAI?」と思う方もいるだろう。

しかし実際に現場に入ると、記録業務の山、引き継ぎの属人化、新人教育の負担
どこの施設も同じ悩みを抱えていた。

そして、何度か研修を重ねる中で「この順番でやれば、現場が動く」という段取りが見えてきた。

1回目にGemini。2回目にNotebookLM

この組み合わせと、間に挟む「1ヶ月」がカギだ。

1回目・Geminiセミナー──50名の会場が「これ、使える」に変わった瞬間

石川県白山市にある特別養護老人ホームで、最初のセミナーを開催した。

参加者は約50名。9テーブル、各テーブル5〜6名。介護職員の方々がノートPCを前にして座っている。

この日のテーマは、GoogleのAIツール「Gemini」を使った実践体験だ。

私がセミナーで大切にしているのは、「すごいでしょ?」で終わらせないこと。参加者自身にプロンプト(AIへの指示文)を入力してもらい、「自分の仕事に使えるかどうか」をその場で判断してもらう。

たとえば、こんな指示を試してもらった。

石川県で特別養護老人ホームを運営しており、車椅子利用者も参加できる春のレクリエーションを5つ提案してほしい

──ただ「レクリエーションを考えて」と聞くのとは、まるで違う回答が返ってくる。
施設の状況を具体的に伝えることで、AIの回答が一気に「使えるもの」に変わる。

会場からは「えっ、画像まで作れるの?」「これなら明日から使える」という声が次々に上がった。
1時間半、ずっとその空気が続いた。

「教えない1ヶ月」が、いちばん大事だった

ここからが、この連続研修のいちばんのポイントだ。

1回目と2回目の間に、約1ヶ月の期間を空ける

この期間、私は何も教えない。

なぜか。1回目で「AIってこんなことができるのか」と体感した参加者が、日々の業務の中で「あれにも使えるんじゃないか」「この作業、AIに任せられるかも」と自分で考え始めるからだ。

講師が次々と「こう使え」「ああ使え」と詰め込んでも、現場には残らない。
自分の頭で考えた「使い道」だけが、実際の業務に定着する。

この「教えない時間」の設計こそが、単発セミナーと連続研修の決定的な違いだと、私は考えている。

2回目・NotebookLM研修──会場がどよめいた「ラウンド記録の自動整理」

1ヶ月後、同じ施設で2回目の研修を開催した。

今度のテーマはNotebookLM。Geminiとは性格が違うツールだ。

私はNotebookLMを「あなた専用のAIアシスタントがいる、魔法のノート」と紹介している。

ChatGPTやGeminiが「何でも答えてくれるAI」だとすれば、NotebookLMは「あなたが渡した資料だけを教科書にして答えるAI」だ。だから、でたらめを言わない。実務向きだ。

この日、最も反響が大きかったのは嘱託医ラウンドの記録業務への活用だった。

特養では、嘱託医が施設を巡回して入居者を診察する。20〜30名分の所見を聞き取り、記録に残す。
これまでは手書きやメモからの転記で、膨大な時間がかかっていた。

NotebookLMを使えば、ラウンドの音声データをアップロードするだけで、入居者ごとに「氏名・日付・医師の所見・処方指示・観察ポイント」を自動で分類・整理できる。

この話をした瞬間、会場にどよめきが起きた。

「えっ、そんなことできるの?」

手書きで何時間もかけていた作業が、AIの下書きを確認・修正する作業に変わる。
浮いた時間は、入居者のケアに充てられる。

もうひとつ紹介したのは、新人教育マニュアルの活用だ。

分厚いマニュアルをNotebookLMに読み込ませると、新人職員が「夜勤の巡回手順は?」と質問するだけで、マニュアルの該当箇所を元にした回答が返ってくる。

読まれないマニュアルが、「質問できるマニュアル」に変わる。

なぜ「Geminiが先、NotebookLMが後」なのか

この順番には理由がある。

NotebookLMは強力なツールだが、「AIに指示を出す」という体験がゼロの状態でいきなり触っても、何をすればいいかわからない。

1回目のGeminiセミナーで「AIに聞けば答えが返ってくる」「指示の出し方で結果が変わる」という基礎体験を積んでおくことで、2回目のNotebookLMの価値が一気に理解できるようになる。

逆に言えば、いきなりNotebookLMから始めると「すごいけど、自分には難しそう」で終わってしまう。

基礎体験→熟成期間→実務ツール。

この段取りが、現場の理解度を最大化する。

3回目で「定着」を仕上げる

現在、この特養では3回目の研修を準備している。

3回目のテーマは「実践で出た課題の解決」だ。

2回目の研修後、実際にNotebookLMを業務で試した職員から「ここがうまくいかない」「こういう使い方はできるのか」という具体的な疑問が出てくる。その疑問を3回目で拾い、一緒に解決する。

この「やってみた→つまずいた→解決した」というサイクルを回すことで、AIが「研修で触ったツール」から「毎日使う道具」に変わる。

この段取りは、介護だけの話ではない

社会福祉の話をしてきたが、この「Gemini→1ヶ月→NotebookLM→実践フォロー」という流れは、業種を問わず通用すると私は考えている。

建設業なら、安全管理マニュアルや施工記録をNotebookLMに読み込ませれば、現場監督の経験知がデジタル化できる。

製造業なら品質管理の手順書、小売業なら接客マニュアル。どの業種にも「分厚いマニュアルがあるのに、読まれていない」という課題があるからだ。

そして、どの業種にも共通しているのは人手不足だ。

記録や引き継ぎに時間を取られている限り、本来やるべき仕事──介護なら入居者のケア、建設なら安全管理、製造なら品質向上──に手が回らない。

AIは人の仕事を奪うものではない。人が本来やるべき仕事に集中するための道具だ。

石川県の特養で50名の介護職員が実証してくれたこの導入フロー。
次はあなたの現場で試してみませんか。

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