生成AIを毎日使う人が手に入れた「疑う力」|情報リテラシーは"使う側"から育つ

「それ、本当?」と言える人間が増えたら、この国はもっと強くなる。

「先生、最近どの画像を見ても疑ってしまうんです」

先日、私が担当するDX講義の受講生が、こんなことを言いました。

「ネットで写真を見ても、『これ、生成AIで作ったんじゃないか』って、つい疑っちゃうんですよ」

周りの受講生が笑いました。
私も笑いました。

でも、心の中では「いい傾向だな」と思っていました。

なぜか。

この人は、"疑う力"を手に入れたからです。

「疑う」は、ネガティブじゃない

日本では「疑う」という言葉に、どこか後ろめたい響きがあります。
素直に信じるのが美徳。先生の言うことは正しい。テレビが言ってるなら本当だろう。
上が決めたことだから従おう。

私は海外でも生活していた時期がありますが、正直に言います。

日本人は、メディアやネットの情報を信用しすぎです。

海外では「ソースは?」「誰が言ってるの?」「その数字の出どころは?」と聞くのは当たり前の会話です。疑うことは失礼ではなく、知性の証です。

ところが日本では、テレビのコメンテーターが「こうです」と言えば、翌日にはそれが"正解"になる。
ネットの記事にもっともらしいグラフが載っていれば、そのまま鵜呑みにする。

「それって本当なの?」と聞くだけで、空気が読めないヤツ扱いされる。

この国は、長い間そうやって回ってきました。

生成AIが「疑う筋肉」を鍛えている

ここで面白い逆転が起きています。

生成AIを毎日使っている人は、AIが平気で間違えることを知っています。
もっともらしい顔をして、堂々とウソをつくことも知っています。
いわゆる「ハルシネーション」、AIが事実と異なる情報をさも本当のように生成する現象です。

私はDX講義だけで500時間以上、受講生と一緒に生成AIを触ってきました。
その中で、明らかな変化を感じています。

最初のころの受講生はこうでした。

「AIがこう言ってるから、これが正解ですよね?」

それが、3か月も経つとこう変わります。

「AIはこう出してきたけど、ちょっと怪しいんで自分でも調べました」

この変化、ものすごく大きいんです。

生成AIという「もっともらしく間違える相手」と毎日付き合うことで、人は自然と「本当かどうか確認する癖」がつく。
つまり、生成AIが情報リテラシーの"筋トレ器具"になっているのです。

本当に怖いのは、フェイクニュースじゃない

世の中では「生成AIでフェイクニュースが増える」「ディープフェイクが危険だ」と騒がれています。

それは事実です。AIが作った偽画像、偽動画、偽記事は今後さらに増えるでしょう。

でも、私が本当に怖いと思っているのは、フェイクそのものではありません。

「疑問を持たない人間が大量にいること」のほうが、よほど怖い。

考えてみてください。フェイクニュースが効くのは、受け取る側が何も考えずに信じるからです。
どれだけ精巧な偽物を作っても、「ん? これ本当か?」と立ち止まる人には効きません。

つまり、問題の本質はフェイクを「作る側」ではなく、「受け取る側」の思考停止にあるのです。

「考えない国民」は、誰かにとって都合がいい

少し踏み込んだ話をします。

国民が「疑わない」「考えない」「お上の言うことに従う」状態は、ある種の人たちにとって非常に都合がいいのです。

トップダウンで降りてくる方針。
よく分からないまま進む政策。
根拠が曖昧なまま「正しい」とされるもの。

それに「なぜ?」と聞く人間が少なければ少ないほど、物事はスムーズに進みます。進む側にとっては。

私は別に陰謀論を語りたいわけではありません。
ただ、「疑問を持つ人が増えること」を歓迎しない構造が、この社会には確かにある。
それだけは言っておきたい。

だからこそ、生成AIを日常的に使い、「これって本当?」と自然に考えられるようになった人たちは、この国にとって本当に価値がある存在です。

「疑う力」は、最強の情報リテラシーである

フェイクニュースの見分け方をマニュアル化しても、イタチごっこです。
テクニックはすぐに古くなります。

でも、「それって本当なの?」と問いかける姿勢は、一生使えます。

私の講義では、AIの使い方だけでなく、この「疑う力」を育てることを重視しています。
AIに出させた回答をそのまま使うな。
必ず自分の目で確認しろ。違和感を感じたら、その違和感を大事にしろ。

受講生が「どの画像もAIに見えてしまう」と笑っていたあの瞬間。
あれは、情報リテラシーが体に染みついた証拠です。

まとめ:生成AIは「賢い疑い深さ」を育てる最高のツール

生成AIの普及で、ハルシネーションやフェイクコンテンツが増えるのは事実です。
しかし、それと同時に、「情報を鵜呑みにしない人間」も確実に増えています。

毎日AIを使い、AIの間違いに気づき、自分で確認する習慣を持った人は、AIがない時代よりもはるかにリテラシーが高い。

「疑う力」は、ネガティブな猜疑心ではありません。自分の頭で考え、自分の判断で動くための、最も基本的な能力です。

この力を持った人が増えることが、地方から、この国全体を変えていく第一歩だと、私は本気で信じています。

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