
「東京の有名人を呼べばいい」——その安直さに、県民はもう気づいています。
広島のテレビで知った「ブレインシェアリング」という考え方
広島に出張中の朝、何気なくテレビをつけたら「ブレインシェアリング」という言葉が耳に飛び込んできました。
個人が持つ知識やノウハウを共有し、地域や組織の課題解決に活かす——広島県議会のまとめでも取り上げられていた考え方です。
「これは、いい概念だ」と素直に思いました。
と同時に、「これを石川県でやるなら、絶対に気をつけなければいけないことがある」と、頭に浮かんだのです。
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石川県の新県政がスタートする今、「全県で生成AI活用」は避けて通れない
石川県では新知事のもと、新たな県政がスタートします。
デジタル化、DX、そして生成AI——これらは「やるかやらないか」ではなく、もはや「どうやるか」のフェーズに入っています。
全県で生成AIを活用していくには、その視点を持った人材の知見を広く共有する「ブレインシェアリング」の仕組みが必要です。
ここまでは、誰もが賛成するでしょう。
問題は、「誰の頭脳(ブレイン)を共有するのか」 です。
「石川のような地方にはそんな人いないでしょ」その思い込みが一番危ない
こう言う人がいます。
「生成AIに詳しい人なんて、地方にはいないよ。東京から呼ぶしかない」
気持ちはわかります。東京には大企業のAI導入事例を語れる人がいます。
YouTubeで最新技術をわかりやすく解説している人もたくさんいます。
では、聞きます。
その人たちは、従業員30名のアナログな会社に入って、社員の隣に座って、一緒に手を動かしながら説明できますか?
「ChatGPTとは何か」を90分講演できる人と、「うちの会社の日報をまずAIで書いてみましょうか」と現場で伴走できる人は、まったくの別物です。
地方に必要なのは「最新情報を知っている人」ではなく「現場で手を動かせる人」
私はこれまで石川県を中心に、企業登壇70回以上、職業訓練のDX講座は5期目を迎えています。
ISICO(石川県産業創出支援機構)や石川県商工会連合会の専門家としても登録されています。
この経験から断言します。
地方の中小企業が本当に求めているのは、「すごい話を聞かせてくれる人」ではありません。
「うちの会社でも使えるように、隣で教えてくれる人」 です。
東京から著名な講師を呼んで、2時間の講演を聞く。
参加者は「すごかった」と感想を言い合い、翌日からは何も変わらない。
この光景を、何度見てきたことか。
これは講師が悪いのではありません。選定の視点が間違っているのです。
「ブレインシェアリング」の成否は、選定の解像度で決まる
ブレインシェアリングという概念そのものは、素晴らしいと思います。
知識を持つ人の頭脳を地域で共有し、全体の底上げを図る。
地方創生においても、生成AI活用においても、この発想は不可欠です。
ただし、その「ブレイン」の選び方に、最大限の注意を払ってほしい。
チェックすべきは、こういうポイントです。
- 現場経験があるか ——地方の中小企業の空気を知っているか。従業員10名〜50名規模の会社に入ったことがあるか
- 手を動かせるか ——講演だけでなく、社員と一緒にAIツールを触って伴走できるか
- 横文字で煙に巻かないか ——「プロンプトエンジニアリング」ではなく「AIへの発注書の書き方」と説明できるか
- 地域に根を張っているか ——東京から日帰りで来て終わりではなく、継続的に関われるか
県民はもう気づいている
市民や県民は、思っている以上に目が肥えています。
「なんか有名な人が来て話してくれたけど、結局うちには関係なかったよね」
そんな経験を何度もしてきたからです。
新しい県政が生成AI活用を掲げるなら、ブレインシェアリングの仕組みは大賛成です。
ただし、「誰の知見を共有するか」の選定を、安直にやらないでいただきたい。
東京の看板ではなく、地方の現場を知り、泥臭く手を動かせる人間を選ぶ。
それが、石川県のブレインシェアリングを成功させる唯一の条件です。
