皆さんこんにちは。
今日は「サンクコスト」という観点から、生成AI活用・導入についてお話しします。
来週から2026年度が始まります。新年度のスタートダッシュです。
生成AI活用を社内で推進しようかどうしようか、迷っている時間はもうありません。
就職・転職市場では面接のたびに「御社は生成AI活用していますよね?」と聞かれ、求人票に「ワード・エクセル必須」と書いているだけでは誰も採用できない時代です。
今日は、ある2人の社長の話をします。
Contents
同じ悩みを抱えた2人の社長
会社の規模はほぼ同じ。業種も同じ。2人は幼馴染で、ともに60代の経営者です。
2025年の年末、忘年会の席でこんな会話をしていました。
「生成AI、うちも何かやらないとまずいよな」
「分かってるんだけど、何から手をつけていいか分からない」
「導入して失敗したら、その金と時間は丸損だしな」
「もう少し様子を見てからでも遅くないだろう」
2人とも同じ不安を抱え、同じ結論で年を越しました。
しかし年明け、1人だけが動き出します。
転機になった「サンクコスト」という言葉
きっかけは、石川県金沢市でAIの実践と発信を続けているコンサルタントの記事でした。
そこに「サンクコスト」という言葉があった。
サンクコスト(埋没費用)とは、すでに支出していて、どの選択をしても戻ってこないコストのこと。
経済学やビジネスの世界では「将来の意思決定では無視するべきコスト」とされています。
よくある例が「コンコルド効果」です。もうこれだけ投資したんだからやめられない——そう思って赤字事業を続けてしまう心理。
合理的に考えれば、過去にいくら使ったかに関係なく、「これからどうすれば利益が最大化するか」で判断すべきです。
この社長は、この言葉を独自の覚悟に変えました。
「4月から半年、本気でやってみよう。もし成果が出なかったら、それをサンクコストと割り切ろう。最初から"戻ってこないコスト"だと覚悟して始めれば、失敗を恐れて動けないという呪縛から解放される」
もう1人の社長は、年末の「もう少し様子を見よう」のまま、春を迎えました。
半年後——偶然の再会で見えた明暗
2026年10月。2人は偶然、取引先の展示会で顔を合わせました。
たった半年で、2人の表情はまるで違っていました。
動き出した社長の会社では、見積書作成の時間が4割短縮され、若手社員が自発的にAI活用のアイデアを出すようになっていた。解約したツールもあるし、うまくいかなかった施策もある。でも、会社全体が「変化すること」に慣れ始めていた。
一方、動かなかった社長の会社には、3つの致命的な遅れが生じていました。
致命的な遅れ①:人材が流出し、採用ができなくなった
この半年で若手社員が3人辞めました。転職先はいずれも「AI活用に積極的な会社」です。
求人を出しても応募が来ない。エージェントからは「求人票に"ワード・エクセル必須"と書いている時点で、若い人は候補から外しますよ」と言われました。
生成AI導入の遅れは、売上より先に採用力を直撃します。
動き出した社長の会社では、中途採用の面接で応募者から「御社では生成AIを活用されていますか?」と聞かれたとき、「4月から全社で取り組んでいる」と胸を張って答えられました。その応募者は他社の内定を蹴って入社を決めました。
「生成AIを使える環境かどうか」は、もはや求職者が会社を選ぶ基準になっているのです。
致命的な遅れ②:取引先との温度差が広がった
取引先から「御社のDX推進状況を教えてください」というアンケートが届くようになりました。
白紙で返すしかありませんでした。
大手企業はサプライチェーン全体のDX化を進めています。
取引先がAIを活用しているかどうかは、取引継続の判断材料になりつつあります。
「うちはまだ検討中です」——その回答が半年間続いたことで、新規案件の打診が明らかに減りました。
動き出した社長の会社では、まだAI活用の成果は道半ばでも、「取り組んでいる」という事実そのものが取引先からの信頼につながっていました。
致命的な遅れ③:社員の「変化への免疫」が失われた
半年間「現状維持」を続けた組織には、ある種の硬直化が起きます。
「今のやり方で回っているんだから、変える必要はない」
この空気が定着すると、いざ導入を決断しても社員がついてきません。
変化に対する組織の免疫力が、半年の不作為で確実に低下していたのです。
動き出した社長の会社でも、最初の1〜2ヶ月は混乱がありました。「前のやり方の方が早い」という不満も出ました。
でも3ヶ月目には、若手が自分なりの活用法を見つけ、それが周囲に広がり始めた。半年後には「次は何にAIを使えるか」と社員が自ら考える文化が芽生えていました。
この「変化に慣れた組織」と「変化を拒む組織」の差は、今後あらゆる局面で効いてきます。
「サンクコストになってもいい」という覚悟の価値
動き出した社長は言いました。
「正直、失敗もたくさんあった。解約したツールもある。成果に直結しなかった投資もある。でも、あの半年をサンクコストだとは思っていない。社員が変わった。会社の空気が変わった。それは金額では測れない」
そして、こう続けました。
「最初に"サンクコストになってもいい"と覚悟したから動けた。逆説的だけど、サンクコストを受け入れる覚悟が、サンクコストにならない結果を生んだんだと思う」
一方、動かなかった社長の半年はどうだったか。
導入コストはゼロ。ツール代もゼロ。教育の手間もゼロ。数字の上では「何も失っていない」ように見えます。
しかし実態は違います。人材の流出、採用力の低下、取引先との温度差、組織の硬直化——「何もしなかったこと」のコストは、目に見えないだけで確実に積み上がっていました。
これこそが、本当の意味での「サンクコスト」ではないでしょうか。
取り戻せない半年。回収不能な機会損失。どの選択をしても、もう戻ってこない時間。
2026年度、最初の意思決定をどうするか
サンクコストとは「どの選択をしても戻ってこないコスト」です。
ならば問いたい。
「戻ってこない半年」を、挑戦に使いますか。それとも、迷いに使いますか。
完璧な準備は必要ありません。
半年後に振り返って「あのとき動いてよかった」と思えるか、「あのとき動いていれば」と悔やむか。
その分岐点が、まさに今です。
サンクコストになってもいい。
その覚悟が、半年後のあなたの会社を変えます。
2026年度のスタートダッシュは、今日の決断から始まります。
