「ほら見ろ、やっぱりAIなんて」と言いたい人たちへ
2026年2月、パーソル総合研究所が発表した調査が話題になりました。
「生成AIのヘビーユーザーほど残業時間が長い」という結果です。
SNSでは早速「やっぱりAIなんて意味がない」「余計な仕事が増えるだけ」という声が飛び交っています。
正直に言います。私はこの手のニュースが出るたびに、「来たな」と思います。
日本のメディアは、新しいものに対してネガティブな切り口で報じるのが大好きです。
変化を嫌う人にとっては最高の「言い訳」になりますから、よく読まれる。
よく読まれるから、また書かれる。
でも、この調査結果の本質はそこじゃない。
問題は「生成AIが残業を増やした」ことではなく、「効率化で生まれた時間を、組織としてどう扱うか決めていなかった」ことです。
Contents
残業が増えた本当の原因は「AI」ではなく「評価制度」
パーソル総合研究所の調査をもう少し丁寧に読むと、見えてくることがあります。
生成AIを使ったタスクでは、平均16.7%の時間削減ができている。
つまり、AI自体はちゃんと仕事を速くしている。
ところが、全体の業務時間を短縮できたのは利用者の25.4%だけ。
時間削減できた人の61.2%は、空いた時間で「別の仕事」をやっていた。
これ、AIの問題ですか?
違います。「早く終わったなら次をやれ」という組織の空気の問題です。
石川県の中小企業でも同じ光景を何度も見てきました。
優秀な社員が工夫して仕事を早く終わらせると、「じゃあこれもお願い」と次の仕事が降ってくる。
結果、頑張った人ほど損をする。やがてその人は黙って辞めていく。
生成AIでも全く同じことが起きているだけです。
「ジェヴォンズ効果」を知らない経営者が、現場を潰す
経済学に「ジェヴォンズ効果」という考え方があります。
簡単に言えば、「効率が上がると、逆に消費量が増える」という現象です。
19世紀のイギリスで、蒸気機関の燃費が良くなったら石炭の使用量が減るかと思いきや、逆に増えた。
効率が良くなったから、もっと使おうとなったわけです。
生成AIでも同じことが起きています。
「AIで1時間かかっていた資料作成が20分で終わるようになった。じゃあ残りの40分で別の資料も作れるよね」
これを繰り返した結果が「残業増加」の正体です。
問題の根っこは明確です。「効率化で浮いた時間をどう使うか」を経営として決めていない。
もっと言えば、「速く終わらせたことを正当に評価する仕組み」がない。
ここを放置したまま「AIを入れたのに残業が減らない」と嘆くのは、エンジンを載せ替えたのにナビを設定していない車で「目的地に着かない」と文句を言っているようなものです。
「使わない理由」を探す暇があるなら、まず使い倒せ
こういうネガティブなニュースが出ると、「だから私は使わない」と胸を張る人が出てきます。
はっきり言います。それが一番危険です。
日本は世界に比べて、デジタル活用で後追いになりがちです。
その上、アナログを好む文化、変化を嫌う空気がある。
メディアのネガティブ報道は、そういう人たちにとって都合の良い「使わない免罪符」になります。
でも、世界はそんなことを待ってくれません。
私は職業訓練のDX講座で5期にわたって受講生を見てきました。
セミナー登壇も70回を超えています。その現場で断言できることがあります。
生成AIを使わないリスクは、使って失敗するリスクよりはるかに大きい。
使えばミスもする。的外れな回答も出る。プロンプトの調整に時間を取られることもある。
それでも、使い続けた人は確実に「自分なりの使い方」を見つけていく。
一方、「もう少し様子を見よう」と言っている人は、1年経っても同じことを言っています。
走りながら作るべきは「評価の仕組み」
では、生成AIを使い倒しながら、経営者が今すぐやるべきことは何か。
「AIで効率化できた時間を、どう評価するかを決めること」です。
例えば、こういうルールを一つ作るだけでも変わります。
- 「AIを使って業務時間を短縮した社員は、その分早く帰ってよい」
- 「浮いた時間は、スキルアップや新規事業の構想に充てる」
- 「効率化の成果を、人事評価の加点項目に入れる」
大げさな制度改革は要りません。
まず一つ、「速く終わらせた人が報われる」仕組みを作る。それだけで現場の空気は変わります。
「AIに使われるな、AIを使い倒せ」。
これは私がずっと言い続けていることです。
ただし、使い倒すためには「使い倒した人がちゃんと評価される土壌」が必要です。
そこを整えるのは、ツールの問題ではなく、経営の仕事です。
【結論】ネガティブニュースを言い訳にするな。動いた者だけが生き残る
「生成AIで残業が増えた」というニュースの本質は、AIが悪いのではなく、組織の仕組みが追いついていないということです。
石川県の中小企業にとって、人手不足は待ったなしの課題です。
「AIは逆効果だ」と立ち止まっている余裕はありません。
まず使い倒す。そして、効率化の成果を評価する仕組みを走りながら作る。
なりふり構わず動いた会社だけが、この先も生き残ります。
私は「こうすれば解決します」と綺麗なスライドを見せて終わるコンサルではありません。
現場に入り、一緒に泥臭く動く伴走者です。
「うちの会社でも生成AIを使ってみたいけど、何から始めればいいかわからない」
そんな経営者の方、まずは一度お話ししましょう。
動き出すのは、今日からでも遅くありません。
