
「社内でDX倶楽部、作りたいよね」――この言葉が出た研修は、何が違ったのか。
「生成AIの環境は整えました。でも、現場が使ってくれないんです」
これは私が企業向け研修の現場で、何度も耳にしてきた言葉です。
2025年の崖――あの号令に背中を押されて、大手企業を中心に生成AIの導入が一気に進みました。
アカウントを発行し、マニュアルを配り、
全社メールで「活用してください」と通達する。やるべきことはやった。なのに、現場は動かない。
「結局、意識の高い一部の社員しか触っていない」
「研修をやったけど、翌週にはもう忘れている」
経営者や人事担当者の方なら、この光景に心当たりがあるのではないでしょうか。
私は石川県金沢市を拠点に、職業訓練のDX講義で480時間以上、セミナー登壇は70回以上の現場に立ってきました。
その経験から断言できることがあります。
「使われない」のは、社員のやる気の問題ではありません。研修の"設計"の問題です。
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「お金を払って来る人」と「来させられた人」は、そもそも違う
少しだけ、私の話をさせてください。
これまで私が対面してきた方々は、大きく二つに分かれます。
一つは、セミナーに自分でお金を払って来てくれる方。
もう一つは、職業訓練で「次の仕事に絶対生かすんだ」という熱い気持ちで参加してくれる方。
どちらも、自分の意志で来ている。だから、こちらが何かを伝えれば、スポンジのように吸収してくれます。
でも、企業研修は違います。
「会社に言われたから来ました」
「正直、自分の業務には関係ないと思ってます」
この温度差。ここを無視して、いきなり「ChatGPTの使い方」を教えても、右から左に流れていくだけです。
「座学」をやめた。だから変わった
私が実際に行った企業向け生成AI研修の話をします。
形式は、半日4時間を6回、2週間ごとに実施するもの。約3ヶ月間のプログラムです。
最初に決めたことがあります。
座学はやらない。
もちろん、生成AIやDXの概要、最近の動向といった「知識のインプット」はあります。
でも、それは全体のごく一部。メインは徹底的に「手を動かす」ことに振り切りました。
具体的にはこういう内容です。
- 生成AIへの指示文(AIへの発注書)の作り方を、自分の業務で試す
- 画像生成で「自分の仕事に使える素材」を実際に作ってみる
- NotebookLMで社内資料を読み込ませて、AIに質問してみる
- Google AppSheetで、自分たちの業務に合った簡易アプリをノーコードで作る
- Looker Studioでデータを可視化してみる
そして最終回。NotebookLMを使ってプレゼン資料を作り、受講者の皆さんに発表してもらいました。
ここがポイントです。「先生の話を聞いて終わり」ではなく、自分で作って、自分の言葉で発表する。
この体験が、人を変えます。
最終日に起きた「想定外」の出来事
正直に言います。最終日、私が一番驚いたのは、研修の内容に対する感想ではありませんでした。
この研修には、同じ会社の別々の部署から参加者が集まっていました。
普段の業務では接点がほとんどない人たち。
発表が終わった後、自然とこんな会話が生まれていました。
「うちの部署、こういう課題があるんだけど、そっちはどうしてる?」
「え、それならこのツール使えるんじゃない?」
「こういう情報交換の場、もっとあったらいいよね」
そして――。
「社内でDX倶楽部、作りたいよね」
この言葉が、受講者の口から自然に出てきたんです。
誰かに言わされたわけではありません。研修のカリキュラムに「コミュニティを作りましょう」なんて項目はありません。
3ヶ月間、一緒に手を動かし、悩み、発表し合った結果として、勝手に生まれた言葉です。
「使われない研修」と「人が動く研修」の決定的な差
ここで、少し整理させてください。
「環境を整えたのに使われない」と嘆く企業の研修と、「DX倶楽部を作りたい」と声が上がる研修。
この差はどこにあるのか。
1. 「1回きり」か「継続」か
半日の単発研修で人は変わりません。2週間ごとに6回、約3ヶ月。この「間」がある設計だからこそ、学んだことを現場で試し、次回に疑問を持ち寄ることができます。
2. 「聞くだけ」か「手を動かす」か
スライドを眺めて「すごいですね」で終わる研修は、翌日には8割忘れます。自分の業務データで、自分のアプリを作る。この「自分ごと化」がなければ、定着はしません。
3. 「ツールの使い方」か「仲間ができる場」か
これが最も見落とされているポイントです。研修の本当の価値は、スキルの習得だけではありません。**「この会社にも、同じ方向を向いている仲間がいる」**と気づくこと。部署を超えた横のつながりが生まれること。これが、研修後も「使い続ける」最大のエンジンになるのです。
結論:研修は「教える場」ではなく「火をつける場」
「生成AIを導入したのに使われない」
この問題の本質は、ツールの良し悪しでも、社員のITリテラシーでもありません。
「自分でやってみた」という体験と、「一緒にやろう」と言える仲間。この二つが揃ったとき、人は自分から動き出します。
私がやっているのは、単なるITツールの操作研修ではありません。
組織の中に「自走するDXの種火」を灯す仕事です。
石川県・金沢市の企業で、「環境は整えたけど、現場が動かない」と感じている経営者の方。
一緒に、社員が自分から動き出す研修を設計しませんか。
「DX倶楽部、作りたいよね」――あなたの会社でも、この言葉が聞こえてくる日は、そう遠くないはずです。

