
完璧な講義資料が、社員の思考を止めている。
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「自走」という言葉が、私の口ではなく、参加者の口から出た日
先日、金沢市でDX実践会議の第4回目を開催しました。
終了後、参加者のひとりがNote記事を書いてくれました。
私が頼んだわけではありません。自ら、気づきをまとめて発信してくれたのです。
その記事に、こんな言葉がありました。
「心理的安全性」「自走」
私がセミナーや職業訓練の現場で、ずっと大切にしてきた言葉です。
それが今、参加者自身の言葉として出てくるようになった。
正直、これ以上うれしいことはありません。
でも同時に、こう思う経営者の方もいるのではないでしょうか。
「心理的安全性なんて、うちの会社には関係ない話だろう」
「社員が自走してくれたら苦労しない。どうすればいいんだ」
今日は、石川県の現場で70回以上のセミナー・480時間の職業訓練指導から辿り着いた、ひとつの「答え」をお伝えします。
心理的安全性は、スローガンでは作れない
「心理的安全性を高めましょう」
この言葉、最近よく聞きますよね。
でも正直に言います。
「自由に意見を言っていいよ」と張り紙を貼っても、誰も意見を言わないのが現実です。
では、何が機能するのか。
私が現場で実感しているのは、「講師(リーダー)自身が、先に失敗を見せること」です。
今回のDX実践会議でも、私は自己紹介の場で包み隠さず失敗談をしています。
アメリカロサンゼルスでのEC事業の苦労も、Airbnbを閉めたときの判断も。
「この人は偉そうなことを言うだけじゃない」と感じてもらうことが、最初の一手なのです。
さらに今回の参加者の中には、私の日々のSNS発信やブログを読み続けてくれている方がいました。
実際にお会いするのは2回目でしたが、「この人がどんな人間か」はすでに伝わっていました。
日々の発信は、宣伝ではありません。
会う前から関係を作る、現代の自己開示なのです。
あえて「50点の資料」で会議室に入る理由
もうひとつ、今回の参加者レポートに書かれていたことがありました。
「一方通行にしない」という視点です。
私には、ひとつの習慣があります。
講義資料を、あえて70%の出来で持っていく。
今回の実践会議では、石川県立図書館での大規模ワークショップに向けた資料を一緒に作る場でした。
そのため、意図的に50%の完成度で持ち込みました。
「え、それで大丈夫なんですか?」とよく聞かれます。
大丈夫です。むしろ、それがいい。
心理的安全性が確立された場では、「余白」は「参加者が手を動かすスペース」になります。
完成した資料は、読むだけで終わります。
未完成な資料は、考えることを強制します。
参加者たちからは、どんどん意見が出てきました。
「ここはこうしたほうがいいのでは」「現場ではこういう課題があります」と。
気づけば、私の資料は参加者みんなの資料になっていました。
これが「自走力」の種です。
自分たちで作ったものを、自分たちで動かしたくなる。
その感覚を体験させることが、一番の研修なのです。
DXが止まる組織の「共通点」
石川県や富山県の中小企業の経営者と話していると、よく聞く言葉があります。
「もう少し準備が整ったら、DXを始めようと思っている」
何年も待っている会社があります。
生成AIも、社内導入も、「100点の理解」「100点の安全性」を待ち続けていたら、何も始まりません。
ITの世界に「100点の安全」は存在しないからです。
道具は使いながら覚えるものです。
泳げるようになってからプールに入る人は、一生泳げません。
セミナー70回、職業訓練指導480時間の現場でわかったこと。
それは、「完璧な準備」を求める組織が、最も変化に弱いということです。
「異端」だと思っていた時期がありました
正直に言います。
完成された美しいスライドを読み上げる講義スタイルが主流の業界の中で、
「未完成の資料で会議室に入る」
「失敗談を自己紹介でする」
「参加者に余白を渡す」
という私のやり方は、異端なのかと思い悩んだ時期がありました。
でも今回、参加者が書いてくれたレポートを読んで確信しました。
私は、本質的に当たり前のことをしているだけです。
人は、「与えられたもの」より「自分で作ったもの」を大切にします。
社員は、「やらされた研修」より「自分が手を動かした経験」から学びます。
「余白を渡す」とは、相手を信頼することです。
組織の変革とは、結局のところ、その積み重ねなのです。
「自走力」という言葉が、参加者の口から自然に出てくるようになった日。
それが、私にとってのひとつの答えでした。
「準備が整ってから」ではなく、「今日」始めてください
石川県・富山県の経営者の皆さんへ、最後にひとつだけお伝えします。
DX推進も、生成AI導入も、社員の自走力も、「100点の準備」を待っていては永遠に始まりません。
必要なのは、完璧な計画ではなく、余白のある第一歩です。
私がやっているのは、ITツールの使い方を教える研修ではありません。
「社員が自分で考え、動き出す組織風土」を一緒に作る伴走支援です。
