
あなたのセミナーで使う横文字、それは受講生のためですか? それとも、自分のためですか?
皆さんこんにちは。
今日は、少人数のワークショップで気を付けたいことを一つ、お話しします。
シンプルです。
業界用語、専門用語、業界人同士なら通じるカタカナ語——極力、使わないようにしましょう。
「何を当たり前のことを」と思われるかもしれません。
でも、これが当たり前にできていない講師が、驚くほど多いのです。
私自身、2年で70回以上の登壇と、累計480時間を超える指導時間の中で何度も痛感してきた「現場のリアル」をもとにお伝えします。
Contents
その横文字、誰のためですか?—現場で嫌われる「4大・意識高い系ワード」
生成AIやDXの研修で飛び交うカタカナ語。
講師が良かれと思って使っている「かっこいい言葉」の中に、受講生の心をそっと閉ざしてしまうものがあります。
私が自戒を込めて「禁止用語」に指定しているものを4つ、ご紹介します。
① レバレッジ
「AIをレバレッジして業務効率を最大化しましょう」——よく聞く言い回しです。
でも、具体策がなければただの空回り。受講生の心の声はこうです。
「テコの原理って言えばいいのに。結局、何をすればいいの?」
② アジャイル
「アジャイル開発でAIを迅速導入」——響きはいい。
でも座学の場で言われても、机上の空論にしか聞こえません。
「素早く試して改善する」と言えば済む話です。
③ KPI
「KPIをトラッキングしてAI効果を測定」——数字好きの講師が連呼しがちなフレーズ。
初心者にとっては「また知らない言葉が出てきた」というプレッシャーでしかありません。
「目標の数値」と言いましょう。
④ ユースケース
「具体的なユースケースから始めましょう」——言いながら出てくるのは、大企業の事例ばかり。
石川県の中小企業、金沢の町工場の経営者にとっては「うちとは関係ない話」に聞こえてしまいます。
「活用事例」と言えば通じます。
これは氷山の一角です。「ローンチ」「ブラッシュアップ」「フィードバック」……挙げればキリがありません。
ワークショップ中の脳内は「戦場」である
ここが、この記事で一番お伝えしたいことです。
少人数のワークショップ。
受講生が実際にパソコンの前に座って、生成AIを触る場面を想像してください。
彼ら・彼女らの頭の中で、こんなことが同時に起きています。
- 「ブラウザのタブ、どれをクリックすればいいんだろう」
- 「さっきのログインパスワード、なんだったっけ」
- 「あ、ChatGPTの画面に戻れない……」
- 「講師の話を聞きながら、手も動かさないと」
受講生の脳のCPUは、これだけで90%使い切っています。
石川県の職業訓練校でDXコースを担当していると、50代、60代の受講生と毎週のように接します。
彼らは経験も能力も豊かです。でも、慣れないデジタルの操作というのは、それだけで大変な集中力を必要とします。
そこに「レバレッジを効かせて」「アジャイルに回して」——意味不明な横文字が投入されたら、どうなるか。
フリーズです。思考停止。パニック。
理解度が下がるどころの話ではありません。
「自分はやっぱりダメだ」と、自信そのものを喪失してしまうのです。
金沢弁で言うなら、「なーん、わからんがになってしまう」——
そんな状態を、講師の言葉遣いひとつで作ってしまっている。
これは「罪」と言っても過言ではありません。
「マウント」を取るか、「手」を取るか
なぜ講師は横文字を使うのでしょうか。
理由は大きく二つあります。一つは「業界の慣習」。
もう一つは——正直に言いましょう——「賢く見せたい」からです。
専門用語を使えば、それっぽく聞こえる。「この先生は詳しそうだ」と思ってもらえる。
つまり、横文字は講師にとっての「マウントツール」になり得るのです。
でも、私のワークショップの目的は「石原がすごいと思われること」ではありません。
「受講生ができるようになること」です。
この二つは、似ているようで正反対です。
だから私は、徹底して「日本語」と「たとえ話」で伝えるようにしています。
たとえばこんなふうに。
- 「プロンプト」→ 「AIへの指示書」
- 「プロンプトエンジニアリング」→ 「AIへの上手な発注書の書き方」
- 「ファインチューニング」→ 「AIの味付け調整」
- 「DX」→ 「デジタルでの仕事の守り方・攻め方」
九九と同じです。「2×3は?」と聞かれて「6」と答えられるようになるまで、難しい数学用語はいりません。
まず「使える」ようになること。言葉はあとからついてきます。
たとえ話は「魔法の翻訳機」
もし、どうしても専門的な概念を伝えなければならない場面があるなら、私は「たとえ話」を使います。
AIの「ハルシネーション(もっともらしいウソ)」を説明するとき、こう言います。
「これはね、仕事がめちゃくちゃできる新入社員だと思ってください。すごい速さで資料を作ってくれる。でも、たまに自信満々にデタラメを書く。だから上司であるあなたが、必ずチェックしないといけないんです」
受講生の表情が変わる瞬間があります。
「あ、なるほど」という目。
この瞬間を作るために講師は存在するのであって、横文字を披露するために存在するのではありません。
優しさこそが、最強のスキル
少人数のワークショップで本当に必要なもの。
それは最先端の知識でも、華麗なスライドでも、流暢なカタカナ語でもありません。
「相手の混乱を想像できる力」——つまり、想像力と優しさです。
かっこいい言葉は、捨てましょう。
その代わり、相手の隣に座って「大丈夫ですよ、一緒にやりましょう」と言える講師でありたい。
石川県・金沢市から、私はそう発信し続けます。「AIに使われるな、AIを使い倒せ」
ただし、その第一歩は「わかる言葉で伝えること」から始まります。
横文字で武装した「権威」より、平易な言葉で差し出す「信頼」を。
私と一緒に、あなたの現場でも生成AIの一歩を踏み出しませんか。
