
これは、能登の未来を考えた上での提言です。そして、実現可能性を込めたシミュレーションストーリーです。
多くの「プロボノ」と呼ばれる無償の専門家の方々が、能登に駆けつけてくださいました。
本当に、感謝しかありません。
でも、正直に言います。
善意の支援には、どうしても「限界」があります。
プロボノの方々には本業があります。
忙しくなれば、当然現場を離れます。
そして残されるのは、「使い方が分からないシステム」「引き継がれなかったパスワード」「誰も触れなくなったツール」です。
私も輪島市のふるさと納税関連で、震災前に少しだけ関わりました。
震災後も、できる範囲で支援させていただきました。
だからこそ、現場を知っているからこそ、言いたいのです。
復興を「イベント」にしないために。対価を払い、責任を持って常駐するプロが必要だ。
「でも予算がない」
そう思いますよね。
七尾市も、輪島市も、珠洲市も。単独でデジタル専門人材を年収700万で雇える自治体なんて、能登にはありません。
ならば、こう考えてみませんか。
5つの自治体で、1人を「シェア」しよう。
前回、私は「中小企業5社で1人を雇う」という提案をしました。かなりの反響をいただきました。
今回は、その自治体版です。
たとえば、七尾市・輪島市・珠洲市・能登町・穴水町。
この5つの自治体が連携して、1人の「広域デジタル専門官」を雇う。
給与は5自治体で分担。週5日、それぞれの町を巡回する。
できない理由を探すより、できる方法を考える。
それが、私たちの仕事です。
Contents
第1章:爆誕! 能登広域デジタル専門官「サトミ」
サトミ(35歳)は、大手システム会社で10年働いてきました。
生まれ育った七尾に帰りたい。両親も高齢になってきた。
でも、地元にはまともな給与のIT系の仕事がない。いや、正確には「なかった」。
ある日、県の就職サイトで目に留まった求人。
「【七尾市・輪島市・珠洲市・能登町・穴水町】5自治体合同募集。広域デジタル専門官。年収700万円。車両支給。社会保険完備。」
5つの自治体が、ひとつの職を作る。
前代未聞の試みでした。でも、サトミの心は決まりました。
「これなら、生活レベルを落とさずに地元に貢献できる!」
面接では、5人の市長・町長が並んでいました。圧迫感はありましたが、彼らの目は本気でした。
「私たちの町には、あなたのような人が必要なんです」
七尾市長の言葉が、サトミの背中を押しました。
こうして、日本初の「広域シェア公務員」が誕生したのです。
第2章:走り回る「シェア公務員」の1週間
サトミの1週間は、まさに戦場でした。
月曜日(七尾市役所)
本庁舎で、基幹システムのクラウド化を指揮します。
「サトミさん、これどうするの?」
若手職員が困り顔で聞いてきます。
「ここは5つの自治体で共通の仕様にしましょう。そうすれば、将来的にシステム更新費用も5分の1になりますよ」
これが「広域シェア」の強みです。1つの自治体だけの最適化ではなく、5つ全体を見渡した設計ができる。
火曜日(輪島市役所)
罹災証明の発行業務が、まだ手書きで行われていました。
「これ、タブレット入力に切り替えましょう。その場で写真も撮れますし、データベース化すれば二重申請も防げます」
「でも、高齢の職員が使えるかしら...」
「大丈夫です。私が研修します。それに、あと何年この作業を手書きで続けるつもりですか?」
少し厳しい言い方でしたが、これが「対価をもらっているプロ」の責任です。
ボランティアなら「無理しないでくださいね」と言って終わり。
でも、サトミには給料が払われています。だから、結果を出す義務がある。
水曜日(珠洲市)
高齢者見守りセンサーの設置作業。
「Wi-Fiがない家が多いんです」
職員が困っていました。
「スターリンクを持ってきました。衛星通信なら、山間部でも繋がります」
珠洲の山奥でも、センサーがお年寄りの異変を検知し、すぐに連絡が行く。
これが、テクノロジーの力です。
木曜日(能登町・穴水町)
午前は能登町で遠隔医療のセットアップ。午後は穴水町で漁協のデジタル化支援。
漁師さんたちは、最初は渋い顔でした。
「俺たちは魚を獲るのが仕事で、パソコンなんか触らんよ」
「そうですよね。だから、触らなくていいシステムを作ります。スマホで写真を撮るだけで、自動的に市場に出荷情報が送られる仕組み。どうですか?」
「...それなら、できるかもな」
ITは、「使わせる」ものじゃない。「気づいたら使っている」ものでなければならない。
金曜日(七尾市・フリー枠)
報告書をまとめ、来週の計画を立てる。そして午後は、5市町の担当者を集めたオンライン会議。
「今週の進捗を共有します。輪島で導入したタブレット入力、七尾でも使えますよ」
ノウハウが、血液のように循環していく。
これが、「広域シェア」の本当の価値でした。
第3章:交差する物語(クロスオーバー)
ある日の夕方。
サトミは能登町の道の駅「すずなり」のコワーキングスペースで作業していました。
Wi-Fiの設定が上手くいかず、少しイライラしていました。
「あの、そこの設定、周波数帯を変えないと繋がらないですよ」
隣に座っていた男性が声をかけてきました。
「え? あ、ありがとうございます!」
助かった。設定を変えると、すぐに繋がりました。
「助かりました。私、自治体のデジタル担当をやってるんですが、まだまだ勉強不足で...」
「自治体の? すごいですね。僕は民間です。ケンジって言います」
ケンジ
彼は、5つの中小企業を巡回する「シェア社員」でした。
地元の酒蔵、旅館、工務店、飲食店、商店のDX化を担当している。
「へえ! 私と似たような働き方ですね」
「そうなんです。最初は『こんな働き方で大丈夫かな』って不安でしたけど、やってみたら面白くて。今週は酒蔵の在庫管理システムを作って、旅館の予約データを一元化して...」
サトミの目が輝きました。
「それ、観光協会の公式サイトと連携させましょう! 私、行政のデータも開放できます」
「本当ですか!?」
ケンジも興奮していました。
民間の商売データと、行政の観光情報。
この2つが繋がれば、能登の観光は爆発的に進化する。
「今度、正式にミーティングしましょう。私、5つの自治体の橋渡しができます」
「僕も、5つの企業の社長を集められます」
2人は、スマホで連絡先を交換しました。
コワーキングスペースの窓から見える夕日が、海を赤く染めていました。
その瞬間、2人は確信しました。
人が「枠」を越えて動けば、町は変わる。
結び:「点」を「面」にするのは、人の移動だ
このストーリーは、架空のものです。
でも、実現できないものではありません。
むしろ、やらなければいけないことです。
1つの自治体、1つの企業で人材を抱え込んでも、限界があります。
予算も、マンパワーも足りない。
でも、「枠」を取り払えば、可能性は無限に広がります。
サトミのような「広域シェア公務員」が5つの町を走り回る。
ケンジのような「企業シェア人材」が5つの会社を支える。
そして、2人が出会い、官民が繋がる。
これが、地方創生の本当の姿だと、私は信じています。
自治体の首長の皆様へ
「ウチだけでは無理」と諦めないでください。
隣の町と手を組めば、できます。
「プロボノに頼るしかない」と諦めないでください。
5つで割れば、プロを雇えます。
私は、そのための「接着剤」になります。
研修も、制度設計も、5自治体の調整も。全部やります。
枠を取り払う勇気を、持ちませんか?
能登を「点」から「面」へ。
一緒に、未来を作りましょう。

