
「先生、このボタンは何ですか?」――受講生の画面に映る、私の資料にない新機能。
これが、生成AI講師の日常です。
今日も、また変わっていた
今日は職業訓練のDX講義でGoogle Geminiの画像生成機能を紹介しました。
「では、ここをクリックして画像を生成してみましょう」
そう言った瞬間、受講生の一人が手を挙げました。
「先生、私の画面にはこんなボタンがあるんですけど、これは何ですか?」
その画面を見て、一瞬固まりました。
私が昨晩確認した時にはなかった、新しいボタンが追加されていたのです。
「……あ、またアップデートされたんですね。すみません、これは私も初めて見ました」
正直に答えるしかありませんでした。
講師を始めて2年弱ですが、もしかしてこの業界での講師って、想像以上に過酷かもしれません。
受講生の画面には、嘘がつけない
普通のパソコン講座なら、テキストは数年使えます。
エクセルの基本操作も、ワードの文書作成も、そう簡単には変わりません。
でも、生成AIは違う。
週単位で新機能が発表され、気づいたらインターフェースが変わっている。
私の講義はワークショップ形式です。
つまり、受講生と一緒に画面を操作しながら進めるスタイル。
だから、私が「見なかったこと」にしようとしても無理なんです。
受講生の目の前には、すでに新しいボタンが実装されている。
それを無視して古い情報だけ教えるなんて、私のプライドが許しません。
でも正直、毎週のようにカリキュラムを調整するのは、本当に大変です。
「使いこなしてる」なんて、とんでもない
先日、ある方からこう言われました。
「石原さんって、この進歩の速い生成AIを使いこなしてますね。すごいです」
私は即座に答えました。
「いや、使いこなせてなんかいませんよ」
謙遜でも何でもなく、これは事実です。
毎週新機能が追加される世界で、「全てを使いこなしている」なんて人、存在しないと思います。
開発している側の人間ですら、全貌を把握できていないんじゃないでしょうか。
でも、その方はこう続けました。
「それでも、ついていこうとしているのがすごいんですよ」
その言葉に、少しだけ救われた気がしました。
完璧じゃなくていい。ただ、逃げないだけ
気づいたことがあります。
「全てを知ってから教える」というスタンスは、もうこの業界では通用しないということ。
むしろ必要なのは、「私も初めて見ました。じゃあ一緒に試してみましょう」と言える度胸です。
受講生の前で完璧な姿を見せることより、変化を一緒に楽しむ姿勢を見せること。
それが、この時代の講師に求められているスキルなのかもしれません。
昨日の知識で胸を張る講師より、今日の変化に冷や汗をかく講師の方が、結果的に受講生のためになる。
そう信じています。
3倍速のルームランナーに乗って
確かに大変です。
休む暇もなく、常に最新情報をチェックし続けなければいけない。
講義の前日に「明日はこの流れで進めよう」と決めても、当日の朝には状況が変わっていることもあります。
でも、この「強制的に最新を浴び続ける環境」のおかげで、普通の人の3倍のスピードでスキルアップできているのも事実です。
立ち止まることが許されないから、前に進むしかない。
この過酷さを、どこか楽しんでいる自分もいます。
「生成AIを使いこなす」なんて嘘です。
正直に言えば、私は毎週必死で追いかけているだけ。
でも、その「必死さ」こそが、この業界で講師を続けていくための、唯一の武器なのかもしれません。
受講生の画面に映る新しいボタンに、今日も冷や汗をかきながら。
それでも明日も、講義の準備を始めます。

